いくつもの危機を乗り越え!?『ル・ゴロワ フラノ』がついにオープン!(前編)

大塚健一シェフとマダムの敬子さん。足元にあるのはイタリアンカラーの馬! イタリアンに鞍替え、ですね。と言っても料理の本質は変わらない。大塚シェフの味だ。/Photo:Muneaki Maeda

2016年8月31日。この日大塚夫妻は、新天地・富良野へと移り住んだ。ところが彼らを待ち受けていたのは、北海道ではめったに遭遇することのない台風だった。この年は異常気象のせいで1週間に4つもの台風が北海道を直撃する。

「富良野の家に着いたんだけど、すごいことになっていまいした。川が氾濫して、いろいろなものが流されてきて……」。

家はほぼ浸水してしまったという。大塚夫妻はまず自分たちの住まいから片づけなければならなかった。1カ月ぐらいたった頃、ようやく敬子さんから明るいニュースが届いた。

「お店の場所が決まったの!」。

店が東京にあった頃から、二人を見守ってくれた作家・倉本聰氏が、新富良野プリンスホテルでプロデュースする敷地内に「ル・ゴロワ」を作ることを勧めてくれたという。

店内から見える牧草地。昼の明るい景色もいいが、夕方からディナーにかけて刻一刻、空が漆黒の闇に変わる時間も神秘的。/Photo:Muneaki Maeda

倉本氏といえば、「北の国から」をはじめ富良野を舞台にしたドラマを手がけ、富良野を30年間愛し続けてきた北海道では特別な存在だ。新富良野プリンスホテルの敷地内には倉本氏の「創」の思想に基づいた施設が数多く存在する。

倉本聰氏の唱える「創」の思想とは、自らの知恵で多くのものを生み出すことの面白さ、楽しさのこと。倉本氏はかねがね、その中にレストランを作ることで完結させたいと考えていたとか。

そんな偶然が重なり「ル・ゴロワ」再生が実現した。しかし、いかに倉本氏の号令が響こうとも、レストランを作りは長い道のりだった。ホテルと町場のレストラン、組織と個人オーナーの違いは予想より大きかった。

例えば生産者との取引。二人はいままで通り北海道の生産者たちの野菜・魚介・肉を仕入れることを決めていたが、ホテルの方針では個人の生産者には対応できないことも多かった。

例えば納品や発送までを管理するコンピュータの操作管理。パソコンに慣れていない高齢の生産者はどうしたらいいのか? ホテル側はみんなが同じルールで動かなければ困るという。それももっともなのかもしれない。

とはいえ北海道内の生産者とのコミュニケーションを何より大切にし、信頼関係を築いてきたのが「ル・ゴロワ」のポリシーだ。だからこそ、99%北海道産を揃えることもできたのだ。

20年前にゴルフ場から自然の牧草地に戻された。その草が馬たちにとっては大ごちそう。毎日牧草食べ放題!でも、それが馬にとっても自然環境にも自然な循環を促すサステナビリティを実現。/Photo:Muneaki Maeda

長時間の話し合いの結果、「ル・ゴロワ」がこれまでやってきた生産者の立場にたって考えること……それがホテルを変えるきっかけのひとつになるのではないか、ということで同意を得た。

そうこうしているうちに富良野は長い冬に入ってしまう。北海道は冬に入ると、何もかもがストップしてしまう。2017年冬。レストランはまだ形にもなっていなかった。

(次回に続く)

Photo:Muneaki Maeda

■店舗情報

「ル・ゴロワ フラノ」
TEL:0167-22-1123
昼・夜とも予約制(月・火曜休)

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