ネオ・ビート・ノワール・コメディ『ダウン・バイ・ロー』はモノクロの美学があり、トム・ウエイツの歌とともに始まる!

翌朝、ザックたちは小屋の前に繋いであったボートに乗り、沼から川へ入る。似た景色が続き、ザックたちは同じところを堂々巡りしている。突如、ボートの底に穴が開いて浸水する。沈んでいくボートを眺めながら、3人は途方に暮れる。3人は森の中を彷徨い歩く。夜になり、空腹と疲労に苛立ったザックとジャックは口論になり、殴り合う。食糧の兎を捕まえて戻ってきたロベルトが2人を仲裁する。お互いに悪態をつきながら、ザックとジャックは思い思いの方向へ歩いていく。

ロベルトは一人で兎を焼いて、ザックとジャックの帰りを待っている。結局辺りを一周歩いてきただけのザックとジャックは、ロベルトのもとに戻ってくる。ロベルトは2人に兎の肉を食べさせ、3人は友情を確かめ合う。翌朝、ザックたちは無人の公道に出る。3人は寂れた一軒のレストランを発見する。

警察の手が及んでいないか確認するため、ザックとジャックは偵察と称してロベルトを先に店に入らせる。ザックたちは茂みに隠れてロベルトが出てくるのを待つが、時間が経ってもロベルトは姿を見せない。痺れを切らした2人がレストランの中を覗くと、ロベルトはレストランオーナーのイタリア人女性ニコレッタ(ニコレッタ・ブラスキ)の歓待を受けている。ニコレッタはロベルトに料理とワインを振る舞い、2人は楽しげに会話している。

ロベルトは、レストランに入ってきたザックとジャックをニコレッタに紹介する。ニコレッタが食事を勧めると、2人は料理にむしゃぶりつく。ニコレッタと一目で恋に落ちたロベルトは、ニコレッタと生涯をともにすることを決意する。

翌朝、ザックたちはニコレッタの好意で身なりを整えて食卓に着く。この後、ザックはロザンゼルスに、ジャックはザックと反対の東側のどこかへ発つと言う。ロベルトは2人を引き留めるが、ザックとジャックは、幸せを手に入れたロベルトに自分たちは不要だと悟っている。ロベルトとニコレッタに別れを告げて、ザックとジャックは出発する。ロベルトは、去っていく2人に向かって何度も声をかける。分かれ道に差しかかったザックとジャックは、お互いの服を交換して素っ気なく言葉を交わす。2人はそれぞれの道を歩いていく。

ジャームッシュ自身、「時に悪夢、時にお伽話である雰囲気を持ち、ストーリー的には従来のジャンルをオープンに受け入れる“ネオ・ビート・ノワール・コメディ”と呼びたい」と言っている。

本作のおかしみは、どうにもこうにも、1994年の『ショーシャンクの空に』(原題The Shawshank Redemption)や1979年の『アルカトラズからの脱出』(原題Escape From Alcatraz)のような脱獄ものと思わせつつ、脱獄はたったの3秒ぐらいの出来事である点だ。何と、監獄の庭に抜け穴があるのをロベルト・ベニーニが発見し、3人はまんまと逃げ果せるわけだ。脱獄というのは脱獄のプロセスが不屈の闘志とかあっておもしろいものだが、本作はコメディであって、そんなところをおかしみにしているのだ。

1985年に発表したローリングストーンズのキース・リチャーズも飛び入り参加したトム・ウェイツの最高傑作と言われるアルバム『レイン・ドッグ』から2曲、オープニング曲は『ジャッキー・フル・オブ・バーボン』(原題Jockey Full of Bourbon)で、エンディング曲は『タンゴ』(原題Tango Till They’re Sore)になっている。映画でトムが口ずさむ歌の数々は、この世に存在している規制曲だと、莫大な音楽使用料を支払わなければならないから、即興で本人が作った。

「モノクロで撮ることについては、ストーリーを書き上げて配給のあてを探している頃、カラーだったらもっと金を出すのにと言われ続けて、それでむきになっていっそうモノクロで撮る意欲が掻き立てられた。子どもじみているかもしれないけど、実際にこの映画はモノクロだという美学的確信があったんだ」

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動画:pacifist41 – YouTube