ファッションの地政学:アブローがLVメンズのアーティスティック・ディレクターになった本当の意味

週刊ファッション日記#77

いささか旧聞に属するが、「ディオールオム」のデザイナーのクリス・ヴァン・アッシュがハイダー・アッカーマンの後任としてLVMH内のブランドである「ベルルッティ」のクリエイティブ・ディレクターに就いた。アッシュの後任には「ルイ・ヴィトン」(LV)メンズのアーティスティック・ディレクターのキム・ジョーンズがやはりLVMH内横滑りで、就任。

LVはLVMH最大のスターブランドだが、「ディオールオム」も90年~ゼロ年代のメンズシーンを牽引したゴールデンブランドである。まあ、キムにとっては、一目上がりという感じだろう。課長代理が課長になった感じかもしれない。

では、キムの後釜は、誰になったかというと、これが「オフ-ホワイト」のデザイナーであるヴァージル・アブロー。アブローは人気ストリート・ブランドを手掛けるアフリカ系アメリカ人(以下黒人)デザイナーである。この人事は大きく取り上げられたが、黒人がメンズとは言えビッグブランドのアーティスティック・ディレクターになったのは、衝撃的な出来事だ。

過去には「ジバンシィ」メンズの初代クリエイティブ・ディレクターに、オズワルド・ボーテングが起用されたり(2003年)、現在では「バルマン」のチーフデザイナーのオリヴィエ・ルスタンという例はある。しかし、今回の「ルイ・ヴィトン」メンズのアーティスティック・ディレクター就任というのはその重みがまるで違うと思う。