東向島の豚革財布はフィレンツェに負けない!?

筆者が最近愛用しているのは、オーラリーのハイツイストコットン製リブ編みパンツ。一見スウェットパンツ風のデザインだけれど、素材と色のセンスが良いから、このままで海岸を散歩したり、食事や買い物に出かけられるのである。

ただし、この手のパンツはいろいろあるけれど、筆者はポケットがサイドに2個あるだけのものを好む。野暮なヒップポケットなどついていないほうが、より快適度が増すからだ。

で、前述した小型財布が、外出時には必要になってくるわけなのである。

サトウ商店の内田潤さんが推してくれたのは、最近手掛けたばかりという豚革のラウンドファスナー型財布2種。ブランド名はデシベル(Decibell)という。まだ正式な小売先は少ない、らしい。

ピッグスキンといえば、フィレンツェの某有名ブランドのものが知られていて、1960年代頃にはハリウッド映画界のセレブたちがこぞってここの革バッグや小物を求めていたものだ。

しかし内田さんが昔の業者に聞いたところによると、当時はその原皮のほとんどが日本産だったらしい。というのも、イタリアなどでは(中華料理もそうだけど)豚を皮ごと食べる習慣があるため、日本のような良質な豚革が入手できにくいらしい。

そうした理由もあって、日本は昔から豚革製品に関して秀でた技術を誇っていたのだそうである。

また内田さんは、今回豚革製品を開発するにあたって、原皮からなめし、染色、製造に至るまで、すべてを東京墨田区だけで完結するように仕組んだのだという。

「2年後の東京オリンピックは、下町職人の技術を世界へアピールするチャンスだから」と照れ臭そうな顔をしながら、内田さんは自信作の2種についても説明してくれた。

ラウンドファスナーミニは、小銭入れほどの大きさに、小銭、カード、三つ折りにした紙幣が機能的に収納できる設計。

通常ピッグスキンは、革の表面に3個の毛穴が出るのが特徴。しかしこの財布は、豚革でコードバン風のテクスチャーを再現することを狙った、ここだけのオリジナル。パリッとしたモダンな風合いに仕上がっている。

なめしは、俗に渋革染めという植物タンニンなめしだから、環境にやさしく、使い込むほどにエイジングも楽しめる。

ラウンドファスナーショートは、やや正方形で、パンツのサイドポケットに邪魔にならずに収まるぎりぎりの大きさ。

しかし大きくなった分だけ、紙幣やカードの収納に余裕ができ、より使い勝手に優れた出来になっている。とくに小銭収納部分がスナップボタンどめになっているため、ワンタッチで収納部が容易に開閉できて、すこぶる使いやすい。

こちらの財布は、豚革にロシアンカーフ風の風合いをつけるために、特別な型押し加工を施している。植物タンニンなめしだからエイジングを楽しめるうえ、自転車モチーフの柄も素敵である。ちなみに、この革をなめしたのは、ビリヤードのキュー先についたタップを作る特別な職人だという。

2点の財布ともファスナーは、YKKの最上等品エクセラを奢っているので、開閉がスムースなうえ、音も耳に心地良い。

ピッグスキンは、薄手のわりに革の繊維密度が高い。そのため牛革などに比べて、軽く丈夫な革小物ができるという。

忘れ去られた素材を掘り起こし、より優れたモノヘ蘇らせる。下町・革工房の小さな挑戦を、筆者は微力ながら応援したいと思っている。

■商品の問い合わせ https://www.decibell.jp/about-us

Photo:Shuhei Toyama