開業した東京ミッドタウン日比谷で、オールディーズ感覚を刺激されて!?

古い空間と新しい空間がいい案配に混在して、都市の体験を豊かにしてくれることは、近年のコミュニティ感覚やプレイスメイキングの考え方の広がりで、再評価が高まっている。再認識・再評価の中心人物は、最近のドキュメント映画でも見直されている、都市生活の豊かさを主張していた、アメリカ都市活動家のジェイン・ジェイコブズ女史。彼女の著書『アメリカ大都市の死と生』が新訳されたり、若い研究者による再考するリサーチや、回顧的な記念出版物なども出回っている。

日比谷通り側の外観/Photo:Kenichi Watanabe

新しい日比谷の建物のデザインは人々に嫌われるような、建築家の個性を剥き出しにしたような奇抜さはない。オリンピックに向けて建設が進む新国立競技場を設計した建築家の隈研吾氏が言うような「90年代以降の日本は“嫌建築”の空気に支配され」(『新建築』2017年1月号 建築論壇「グローバリゼーションのあとにくる建築」)という建築家のわがままを主張するデザインしすぎたフォルムが、すでにオシャレとはほど遠い認識となって広がり、そうした時代の空気が街角の変化にも影響しているのか。細部は凝っているが外観は優美でおとなしい雰囲気である。

この建物のデザインは、イギリスの建築家=マイケル・ホプキンスの事務所がマスターデザインアーキテクトとして担当だそうで。ホプキンスと言えば、実は彼は、70年代後半にクリエイティブなライフスタイルで一世を風靡した「ハイテック」スタイルの先駆けで、そのバイブル的書籍『HIGH-TECH』に彼の自邸が掲載されていた。ガラスとブラインドで構成された“ハイテック”なホプキンス邸は、その道の人たちの記憶に焼き付けるデザインであった。

言われてみると日比谷の建物自体は、そのハイテックなテイストを大仰ではなく、仄かに感じさせる。近くで見るとガラスと金属がギザギザしているが、その連続でゆったりしたカーブを描く柔らかなフォルム。押しつけがましくないビル全体の風景は、しかも低層階は、かつての三信ビルの石造りのイメージを踏襲した品格のあるファサードデザインで、日比谷通りに落ち着いたストリート風景を作りだしている。実際の設計作業は、そのホプキンスアーキテクツに所属するサイモン・フレーザー氏とホプキンスアーキテクツ日本代表の建築家・星野裕明氏によるもの。そこに現代都市風景の芸達者集団の日建設計がデザイン監修に参加している、とのことである。

歩き回った後で、最新シネコンの中にあるIMAXシアターで3D上映中のリュック・ベッソンのSF作品を体験した。冒頭に流れるデヴィッド・ボウイの歌をバックに宇宙の歴史(というか、これからの未来)を早回しで、しかも異星人とのコンタクトを愉快な演出で進んでいくプロローグ。数世紀先の未来世界に違和感なく流れるオールディーズ・サウンド「Space Oddity」が組み合わされていた。

あのキューブリックの映画「2001年」の宇宙空間に19世紀ウィーンのワルツ「美しき青きドナウ」が新鮮にマッチングした時の魅惑の体験のように、新しい都市空間の中に過去のテイストをイイ感じで組み合わせる、そんなシーンをこれからも探していきたい。

Photo:Kenichi Watanabe

●東京ミッドタウン日比谷
https://www.hibiya.tokyo-midtown.com/jp/

●映画『ジェイン・ジェイコブズ:ニューヨーク都市計画革命』
http://janejacobs-movie.com

●映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』
http://www.valerian.jp