開業した東京ミッドタウン日比谷で、オールディーズ感覚を刺激されて!?

地下広場のアーケード/Photo:Kenichi Watanabe

気になっていたのはテレビの開店予告で見た店内風景で、かつてそこに存在していたアーケードの復活。10 数年前まで、その場所には三信ビルという日本のアールデコ建築が建っていて、レトロスペクティブな時代の芳香を感じさせるアーケードが内部にあった。ファッション撮影に使われたり、昭和初期の雰囲気を体感できるカフェも営業していた。

その気になるアーケードは地下鉄と結ぶ地下広場の通路になっていた。一見して「おお!」と目を見開いて、手元の小さなレンズで静止画におさめる。過去の記憶を呼び覚ます、老朽化で壊されたいにしえの空間が蘇ったか、と感じる。しかし、確かあの場所のアーチの連続には繊細な装飾デザインが繰り返されていたような……。さらには、本来のアーケード空間は、二層分に吹き抜けていて、上階にはところどころ高い視点から見渡せるブリッジ通路で結ばれていたはず……。と目の前の真新しいアーチの間接照明に浮かび上がる空間を眺めつつもまぶたの裏側に、ぼんやりとした記憶が仄暗い過去からやってきてズレたダブルイメージとなって浮遊する。

当時とそっくりそのままタイムスリップ体験を勝手に期待して妄想しすぎてしまったのか。しかし、そのあとで、上のフロアを巡り歩いていると、昭和時代の店舗を再現したような一画(日比谷セントラルマーケット)もあって、レトロなガラスケースと懐かしさを刺激する文字で記された店名サインなどで、過去の記憶を偲ばせる演出も。

また、かつての理髪店で使われていたモノを再利用したとか。この演出のように、地下アーケードも、過去の風景をもう少し忠実に感じさせてくれたら、と。想像するに、チームの中に当時の記憶が色濃く刻まれている年嵩のメンバーはもう存在しなかったのか、諸般の事情なのか。復元されたのは当時のアールデコではなく、空間の形状だけを抽出して抽象化された現代空間演出が採用されていた。

3階の「ビルボード・カフェ&ダイニング」に立ち寄ったせいか、フロアを巡りながら頭に浮かんできたのは、音楽におけるオールディーズ・サウンドのこと。例えば、あの日曜午後に長年続いている、ラジオの長寿プログラムのような音楽。聴取者がご長寿リスナーばかりではないようで、時の堆積で逆に磨きぬかれた過去の名曲を、いい音質で再生するサウンドがオンエアされている。

その「オールディーズ・バット・グッディーズ」感覚(現代でも違和感なく通用し、むしろ新鮮に響く60年代~80年代の楽曲のように)を、現代の都市の体験、平成30年の賑わう店舗のスタイルに置き換えてみたらどうだろう、と連想がつながった。ミッドタウン日比谷3階の「商業施設の中に、街をつくる」コンセプトの「日比谷セントラルマーケット」の感覚がそれに近いかもしれない。

建築の空間と音楽のテイストを同じ土俵で比べてみることは、無理矢理なことは先刻承知だが、最新ポップスだらけの音楽空間を、風景に置き換えてみると……。例えば、各駅ごとに同じような店舗の組み合わせが金太郎飴のように繰り返され、駅名見ないと乗り間違えてしまう、どこも似かよった郊外タウンの駅前風景であろうか。