日本酒輸出快進撃の背景に“SAKEのワイン化”あり!?

内訳を国別に見ると、数量、金額ともに一位は依然アメリカで輸出総量の約4分の1、金額では約3分の1を占めている。二位以降には香港、中国、韓国、台湾、シンガポールと続く。特に中国の躍進は目覚ましく、昨年対比は183%増(量で174%増)と突出している。中国は2011年の原発事故以来、現在も10都県の酒について輸入規制を行っていることを考えると、まさに破竹の勢いである。

これらの日本酒輸出の快進撃の背景には何があるのだろうか? 約1年前にもこのコラムで日本酒輸出の堅調ぶりを取り上げ、海外マーケットで高級日本酒需要を押し上げているのが海外ローカルの飲み手であり、その背景に酒の味わいの多様化、流通の現地化がありそうだとお伝えした。これにより和食以外のフレンチやイタリアンのワインメニューにSAKEがオンリストされる動きが広がってきている。

では、一年たって現在の状況はどうだろう? 酒の味わいの多様化はシャンパン風の発泡酒をはじめフレッシュ感のある生酒、甘み酸味の強いタイプなど、よりバラエティが広がっているとともに、それぞれの銘柄数が増えている。様々な味わいごとに選択肢が増えたことによって、例えばフレンチのコースにオールSAKEでペアリングすることも可能である。

先日、フランスのミシュランレストランから有名シェフが来日し、自らセレクトした日本酒とフレンチでペアリングしたSake Dinnerを開催して大盛況であった。当日は日本の7蔵元も参加し、関係者とフレンチとのペアリングについて検証しあった。流通についても現地ワイン流通企業の新規参入は相変わらず増えており、来日して日本酒蔵元と商談を重ねる流通業者も後を絶たない。

日本酒は本格的にワインマーケットに受け入れられはじめており、現場ではワインマーケットとSAKEマーケットの人材交流が盛んになってきている。

“日本酒のワイン化”とも言えるこの現象を加速させ、より高度なステージに牽引しそうな動きがある。昨年開設された二つのSAKE教育プログラムだ。

ひとつはロンドンを基点とする世界最大のワイン教育機関WSET(Wine&Spirits Education Trust)がはじめたWSET SAKEである。WSETは、ワインを栽培、醸造、マーケティングなど多角的な視点から体系的に語ることの出来るグローバル人材を育成する教育機関で、世界70カ国以上、年間約85,000人が学んでいる。ここに2014年、日本酒を学ぶことの出来るWSET SAKEが日本に先駆けロンドン本部に開設され話題になっていたのだが、昨年5月、いよいよ日本でもWSET SAKE講座が開講された。

もう一つは日本ソムリエ協会がやはり昨年発足させたSake Diplomaである。ソムリエをはじめとした多くの人が日本酒に関する知識を深め技術を向上させることによって、日本の食文化の普及と向上を目指しており、今後は海外展開も予定されている。

両者の共通点はワイン業界の専門家であるソムリエやワイン愛飲家が主な対象になっていること。テキスト内容も多くがワイン的アプローチで、特に日本酒の味わい表現に関する記述はボキャブラリーが豊富かつ加点思考で学べる。そして、もう一点が両者とも多言語対応(WSET SAKEレベル3は英語のみ)していて、SAKEを伝えるスキルが世界共通言葉で身に付くことである。

共通言語を持つことで、日本を含むワインマーケットと酒マーケットの人材交流はさらに加速し蜜になっていくであろう。異なるものが交わる時に化学反応が起きる。今後、受講者が増えていく中で、この化学反応が日本酒の未来に大きく寄与することは間違いない。

「日本酒を世界に」。今、その裾野が急速に広がっている。

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