春のブーケはマリー・ローランサンのイメージで

先日、ブーケを贈ることになった。まず思ったのが「マリー・ローランサンのイメージ」で作ってもらおうかなということだった。よくお願いするフルリストに電話してそのイメージと予算を伝えた。それともう一つ、花と花の間に少しだけ隙間を作って欲しいということも。なぜならパリスタイルのブーケは花と花をキュッとつけて隙間を作らず色合いのバランスを楽しむものだからだ。

それは花にとっては息苦しいことだというのが筆者の考えなのである。そのフルリストとはパリ時代に知り合って、パリの花屋さんで働いていた人なので、パリスタイルが身についていてキュッと詰まったブーケを作るのではないかという懸念がとっさに頭をよぎったのかもしれない。

できあがったブーケはご覧のように、温かな春のようで、それぞれの花がどれも魅力的で個性に溢れている。知らない名前の花も、初めて見る花も一つのブーケにまとまって素敵なハーモニーを奏でている。こんな印象は、繊細で見た目にも美しく、驚きを伴ったフランス料理にも相通じるものがある、と思う。

一つひとつの花がとても魅力的なブーケ。花の名前、いくつ分かりますか?/Photo:Ayako Goto

花の名前をご紹介しよう。中央にあるオレンジとオールドピンクの2つの花は誰でもすぐにわかる花の女王、「薔薇」。その間の上にある小さな花びらが詰まった紫の花は「スカビオサ」で、その右手にあるうすい桜色の花は、薔薇だと思う方もいるかもしれないが「ラナンキュラス」が正解。

スカビオサの左にピョンと飛び出ている薄紫の藤のような花は「ルピナス」で、春先に出回る花である。その左隣の薄い青紫の花は繊細な花びらが特徴の「スイートピー」。スイートピーはボリュームがなくはかなげであるが、このブーケのように数カ所に置くことでその繊細さが際立ってくる。写真右上の小さな蕾(うすい桜色のラナンキュラスの上)はクレマチスだ。クレマチスは初夏の花なのであるが、これは輸入品なので季節を先取りしている。

ブーケの中に使われている「スカビオサ」。和名は「松虫草」。/Photo:Ayako Goto

春らしい色合い、つまりパステル調の色合いで作って欲しいということで「マリー・ローランサンふうのブーケ」という希望を出したのだった。マリー・ローランサンで思い出すのはココ・シャネルである。2人は同じ年、1883年の生まれ。同じ時期にパリで活躍し、当時すでに有名人として名を馳せていたという共通点もある。

ココ・シャネルがマリー・ローランサンに肖像画を依頼して、できあがった作品を見てココ・シャネルは気に入らず、受け取りを拒否したという逸話があるが興味深い。似ていないから、という説があるがそれはどうなのであろうか。華奢な体つきややや骨ばった顔つきはココの特徴が出ているし、ローランサン・タッチは発揮されている。他には同性愛説もある。それはローランサンのココへ向ける愛を感じたからだと。

オランジュリー美術館に常設展示されているマリー・ローランサンが描いた「マドモアゼル・シャネル」/Photo:Ayako Goto

これまでにシャネルに関する書物を数多く読んできたが、今までのところココ・シャネルがこの肖像画について語った本には出会っていない。

マリー・ローランサンが描いた「マドモアゼル・シャネルMademoiselle CHANEL」はオランジュリー美術館に行くといつでも見ることができる。

Photo:Ayako Goto