世界最大のモネ・コレクションを誇るマルモッタン・モネ美術館で『印象、日の出』を観る

この企画展はモネが同時代の友人の画家たちの作品や浮世絵を買ってコレクションしたものを、集めて展示した展覧会で、当時の交友関係がよくわかった。また常設展のメインに据えられている「印象、日の出」を再確認できたり、マルモッタンの館で使われていた調度品の趣味のいい本物に触れることができたりと、なかなか見応えがあった。

マルモッタン・モネ美術館は地下鉄9号線のラ・ミュエット駅で下車し、ラヌラグ公園を突っ切ると目の前にあり、その向こうにはブローニュの森が広がっている。中心地から少し離れただけなのに、この辺りは閑静な住宅街であるためか、空気感が違って気持ちいい。

ラヌラグ公園を突っ切るとこの建物が見える。入口は左手。/Photo:Ayako Goto

この美術館は美術史家ポール・マルモッタンのコレクションを邸宅ごと芸術アカデミーに寄贈して1934年に誕生した。その後、モネ、ルノワール、シスレーらを診察していた医師であり美術愛好家でもあったドゥ・ベリオ医師のコレクション(そのほとんどは印象派の絵だったそうで、彼はまさにメセナだった!)を一人娘のヴィクトリーヌ・ドノ・ドゥ・モンシー夫人が受け継ぎ、彼女がマルモッタン美術館に寄贈し、さらに1966年にはモネの息子のミシェル・モネが父のコレクションを遺贈(その数は何と、およそ150点)して、現在のマルモッタン ・モネ美術館が名実とともに、モネのコレクションに関しては世界最大級となったのである。以前、ここを取材した時に館長さんが、「ここはモネの作品が世界一多いのですよ」と強調して話してくれたことを思い出す。

調度品と絵画のバランスが取れた展示。/Photo:Ayako Goto

クロード・モネは印象派の中でいちばん成功した画家で、作品の数も多いことで知られている。今回の企画展でさらに分かったことは、モネとルノワールはとても仲が良かったということである。印象派関係の本を読んだり、ネットで検索したりすればそれはすぐに分かることだろう。しかし文字の情報として分かることと、絵から実際に伝わってくることとの間には大きな違いがあることに気づいたのである。

ルノワールが描いた「新聞を読むクロード・モネ」、「クロード・モネ夫人の肖像」、「アルジャントゥイユの庭のモネ夫人とその息子ジャン」の3点が壁面に並んで展示してあったのだが、それを見てその絵から伝わってくる雰囲気や画家の眼差しに、家族ぐるみで親密な交流があったことが自然と伝わってくるのであった。

ルノワールが描いた「新聞を読むクロード・モネ」と「クロード・モネ夫人の肖像」。共に1830年頃の作品。マルモッタン・モネ美術館蔵。/Photo:Ayako Goto

「アルジャントゥイユ・・・」はこの企画展のためにワシントン・ナショナル・ギャラリーからやってきたものである。他の2点はマルモッタン・モネ美術館の所蔵。この3点が一堂に揃ったことで、モネとルノワールの強い絆が一層印象づけられたと思う。

ルノワールが描いた「アルジャントゥイユの庭のモネ夫人と息子ジャン」。ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵。/Photo:Ayako Goto

ふたりは生涯を通しての親友で、年齢も一歳違いである。知り合ったのは1862年、モネ22歳、ルノワール21歳の時にパリのシャルル・グレイルの画塾だった。同じクラスにはシスレー(23歳)やバジール(21歳)といった、のちに印象派のグループを結成する仲間がいて交流が始まっている。

それにしてもこれだけの巨匠を輩出したグレイルという人の指導はどんなものだったのだろうかと、興味が湧く。グレイルの作品を見てみると極めて古典的でアカデミズムの王道を行くような画風である。ということは、グレイルは自分のスタイルを決して押しつけるようなことはせず、一人ひとりが持っている個性を引き出し、伸ばしたということになる。印象派が生まれる素地となった人と言ってもいいのではないだろうか?

地下は常設展で、「睡蓮」の連作を始め、モネの作品が明るくゆったりとした空間に展示されている。地下に降りていく階段の踊り場にはモネの全身の写真が大きく引き伸ばされて飾ってあり、親しみやすさが醸し出されている。

地下の展示室にある一連の「睡蓮」の作品を集めたコーナー。/Photo:Ayako Goto

地下の展示室でのメインは、印象派の名称の由来になった絵画「印象、日の出」であろう。モネ32歳のときの作品で、ノルマンディのル・アーヴルの港の風景を描いたものだ。

この作品は、今はマルモッタン・モネ美術館の所有だが、元々は最初に書いたドゥ・ベリオ医師がモネから買ったものである。モネがまだ有名ではない頃のことだ。またこの絵は1985年に盗難に遭い、1990年に発見されていて、そのときのニュースもまだ記憶に残っている。そんなことを思いながら見た「印象、日の出」であった。

マルモッタン・モネ美術館 Musée Marmottan Monet
2, rue Louis-Bouilly 75016 Paris
火曜~日曜 10時~18時(木曜は21時まで)
休館:月曜、1/1、5/1、12/25

Photo:Ayako Goto