『欲望の資本主義2018』を観る。インターネットは経済成長に何の寄与もしていない!?

私は某私立大学の経済学部を一応卒業している。70年代後半の大学の経済学部はマル経(マルクス経済学)と近経(近代経済学)に分かれていたが、私は前者の経済社会学のゼミで元全学連の教授のもとで、マックス・ウェーバーの勉強をして卒論も書いた。1991年のソ連崩壊後、マル経は全くはやらなくなって、学科は激減し、その勢力は縮小した。それはともかく、この番組はなんで世界はこんな格差社会になってしまったのかがテーマ。まさにマルクスが予言した通りではないか、と元マル経の私は思う。

この番組ではもちろん予言者マルクスは出てくるが、シュンペーターの「資本主義はその成功ゆえに社会制度を揺さぶり自ら存続不能に陥る。そして必然的に社会主義に向かう状況が訪れる」を引用して今の状況を説明している。

私が当時、経済史で学んだシュンペーターはあくまでも近代経済学派に属して「創造的破壊がなければ、資本主義は存続できない。すなわちイノベーションこそ、資本主義および企業経営の最重要課題なのだ」という経営学の祖みたいな存在だったのだが、ちょっとばかり今回ニュアンスが変わっているのには驚いた。

いずれにしても、世界のスーパーリッチ8人の資産(4268億ドル)が、世界の74億人の約半分36億人の資産とほぼ同じというのは、超異常であり、「存続不能」は近いような気はする。それがどういう形なのかはわからないが。アメリカのいわゆるスーパーリッチ全人口の0.1%は金もマスコミも政治(政治資金)も抑えているのだが、どんな風に崩壊するというのか。ぜひ、誰かの御高説を聞いてみたい。

まあ、それはともかくこの番組で最も興味深かったのは、1995年のウィンドウズ95の登場以降のインターネット革命に代表されるニュー・テクノロジーが経済成長に全く寄与していないという事実を、フランスの経済学者ダニエル・コーエンもノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツも、指摘している点。

「ヘッジファンド業者を始めとした富裕層がインターネットなどのニュー・テクノロジーで素早い判断ができるようになりさらに富を積み上げる結果になった」とコーエン。「寄与があるかどうか、まだ議論はされているが、電気や遺伝子工学のような寄与はないのは事実」とスティグリッツ。「いわゆる通信革命に代表されるテクノロジー革命は、生産者と消費者のマッチングを変えただけなのだ」とコーエン。まさにマッチング、つまり流通を変えただけで、何も新しいものは生み出してはいないのだ。

日本のファッション&アパレル業界に目を転じても、ZOZO(スタートトゥデイ)が独り勝ちしているネットショッピングがまさにそうではないか。各社はいまEコマース事業の本格化を喫緊の課題に挙げているが、消費者にとってはマッチングが的確になるだけで、それによって購買の総量が大きく増えるわけではない。実際各社の総売り上げ15%程度になると実店舗の売り上げにモロに影響が出始めてくる。

もちろん利益面の恩恵はある。実店舗の家賃がなくなるだけ利益が増えるという効果はもちろんある。しかしZOZOのようなECモールの掛け率は、百貨店並みに近付いている。儲けたZOZOは今度は、画期的プライベートブランド「ゾゾスーツ」でアパレル市場に殴りこみをかけるという。これはマッチングではなく待ち望まれた新商品(モノ)である。既存のアパレルメーカーは踏んだり蹴ったりである。

インターネットは、当初民主的な通信ツールと言われた。誰でも同じようにタダで使えるからだ。しかし現在これで巨大ビジネスをしているのは「GAFA(ガーファ:グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの4社)だけ。しかも4社とも競合のいない独占体制を築いている」とコーエン。

低所得者層には、スマホとゲームでも与えておけばいい、という感じなのだろう。スマホやゲームの巨大企業が笑っている。おーい、そこの、スマホを見ながら駅の階段をフラフラ下りてるお嬢さん、危ないよ!!

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