人口242人!? おとぎの国に迷い込んだようなノルマンディの小さな村、ブーヴロン・アン・オージュ

「ブーヴロン・アン・オージュ」の村の中心にあるのが広場だ。この広場をぐるっと一回りしても、15分もあれば終わってしまう。しかし、しばらくするといつの間にかまるでおとぎの国に迷い込んだような感覚にとらわれるのはなぜだろう?

看板の「EPICERIE」(エピスリー)は食料品店の意だが、この地方の物産やカゴ、雑貨などを売っている。商品の配置が素敵。/Photo:Ayako Goto

目にする建物はすべて古いコロンバージュ(木の骨組みを外壁に露出する建築で、16~19世紀に多く使われた様式)で統一されていて、ひとつひとつの建物の木の骨組みの形に味わいがあって、パッチワークのようで美しい。高さも2階か3階建てで低く、通りにいても威圧感が全くないのだ。

コロンバージュの木骨組みによく映える美しい色彩のハンギング。/Photo:Ayako Goto

さらに建物の前には花壇があったり、塀に沿って花が植えられていたり、窓辺には鉢植えの花が飾られていて、気持ちが和む。よく見るとどこの家も、どの店も花を飾り、郵便局の窓辺にも花の鉢が置かれている。ブーヴロン・アン・オージュは「フランスの最も美しい村(Les plus beaux villages de France)」のひとつであると同時に「花の街(村)(Ville Fleurie)」にもなっている。

木の骨組みがパッチワークのような民家で、趣のある佇まいだ。花壇には花が植えられて。/Photo:Ayako Goto

人口は242人(本年度版 ミシュラン)である。広場を一回りしてみよう。広場の端にある「カフェ・デュ・コワフュール」は、元美容院をカフェにしたところ。舗道にテーブルと椅子を並べたカフェスタイルは他所と変わらないが、店内に入るとかつてこの場所で使われていた髪をカットするハサミなどの器具をガラスのケースに入れて展示してあって、小さなプライベート・ミュゼのようだ。

昼時にはクレープ店が賑わう。クレープはフランス北西部(ブルターニュ地方やノルマンディ地方)の郷土料理で、ガレットと呼ばれるそば粉を使ってチーズやハムを包んで食べるものと、デザートとして小麦粉を使ったクレープがあり、その両方を、現地のリンゴ酒シードルと一緒にとるのが一般的である。

興味深いアンティーク店もある。陶器やグラス類が豊富で今はもう失くなった窯のやきものなどもあって、女性店主の趣味の良さが伺える。パリに30年間住んでいたが、この村が気に入って移り住んだのだそう。

「ブーヴロン・アン・オージュ」にはミシュランの1つ星レストラン「ル・パヴェ・ドージュ」もある。こんな小さな村にガストロノミー(美食)のレストランがあることに最初は意外に感じるが、いかにもフランスっぽいと思う。知る人ぞ知るというのがフランス人は好きなのだ。「パリからクルマでやってくる人が多いんですよ」と、オーナー・シェフのジェローム・バンサー氏が話してくれた。そう、パリから「ブーヴロン・アン・オージュ」まで約220kmだから、それも可能というわけだ。

レストランの軒下には、色鮮やかに咲いた花のハンギング・バスケットが建物のコロンバージュと見事にマッチしていた。

Photo:Ayako Goto