“寛容””豊潤””年々歳々”が、KRUGのキーワード

「そうだね、いろいろ『クリュッグ』の味わいを試してもらえるイベントを提案しても、OKがなかなか出なかったね」と苦笑する。それが、いまやクリュッグにとって最大の人気商品「グランド・キュヴェ」は日本で品薄状態だと聞く。ファッション業界を始めとしたパーティでも、銀座や新宿のクラブでも引っ張りダコなのだ。ラグジュアリー・ブランドで品薄なんて言うのは、「エルメス」と「クリュッグ」ぐらいではないだろうか。

画像提供:MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社

オリヴィエ氏に好きな日本の食べ物を尋ねても、「寿司」「天ぷら」なんて紋切り型の答えは返ってこない。「とんかつ」とまず答えた。只者ではない。なんでとんかつが寿司や天ぷらと並んで外国人の好きな日本食に入らないのか、私は不思議に思っていたがやっと溜飲が下がった。さらにオリヴィエ氏は「何と言っても、パーティが終わった後のラーメンが最高だ」と答えた。ラーメン好きの筆者も、旨いシャンパンが供されたパーティの後のラーメンはこの世の至福だと思う。「クリュッグ」はとんかつにもラーメンにも合うのである。不思議でも何でもない。

オリヴィエ氏の今回の来日は、「クリュッグ アンプラグド」と題されたイベント(9月28日、29日)のためである。雑誌の編集長やクリュッグを熱愛するクリュッグラバーを集め、天王洲アイルのスタインウェイ&サンズそして寺田倉庫で開催された同イベントは、一流の音楽家や一流のシェフが演奏し料理を作る贅沢極まりないイベントだった。このインタビューは、その3日後に行った。

創業者のヨーゼフ・クリュッグはドイツ人で、私は「クリュッグ」にドイツ的な一種の生真面目さを感じているのだが、それを六代目のオリヴィエ氏に尋ねると、以下のような答えが返ってきた。

「ヨーゼフの出身地はマインツです。マインツは、フランスとドイツの国境の町で、ドイツ領になったりフランス領になったりしている場所です。マインツでヨーゼフの実家は精肉店を営んでいましたが、ヨーゼフは家を出て、偶然からフランスのシャンパーニュ地方のランスでシャンパーニュを作ることになったのです。ヨーゼフは、そうしているうちに、その年のブドウの出来不出来で、シャンパーニュの出来不出来が生じるのに我慢がならなくなって、さまざまな畑のブドウをブレンドして、毎年一定水準のシャンパーニュが出来上がる特殊な醸造法を完成させたのです。これが、『クリュッグ』を『クリュッグ』たらしめている秘密です。天候に任せて呑気にシャパ―ニュ作りをしなかったヨーゼフの生真面目さが、ドイツ的と言えば言えますかね」。

現在は最高醸造責任者のエリック・ルベルに受け継がれている。このエリック・ルベルと経営全般を統括するマーガレット・エンリケスCEO、そしてアンバサダーとでもいうべき六代目当主のオリヴィエの3人が「クリュッグ」ビジネスを支える三本の矢である。「クリュッグ」は現在LVMHとディアジオ社の合弁企業のMHDモエヘネシーディアジオが手掛けている。

「クリュッグ」には数々のヴィンテージがあるが、「それぞれを飲んで、ヴィンテージ・イヤーを言い当てられますか?」という意地悪な質問には、しばらく考えてから「大丈夫ですよ」とウインクした。

「クリュッグ」は、4年ほど前に、「クリュッグID」をボトルのラベルに印刷し、それぞれの「クリュッグ」の味わいを表現し増幅させるミュージック・ペアリング、「このミュージシャンはこの音楽をイメージした」がスマホやパソコンで見られるようにした。

音楽と「クリュッグ」を結びつける試みだが、「このミュージック・ペアリングは、香港でのイベントのときに偶然思いついたものですが、その後オックスフォード大学のチャールズ・スペンス博士によって、音楽を聴いて刺激を受ける脳の領域と味覚に対して刺激を受ける領域が、きわめて近いことが証明された。すごい相乗効果がある」。

3年ほど前に始めた「クリュッグ」が選ぶ今年の食材(ちなみに今年はキノコ)と並んで、今や音楽は「クリュッグ」に欠かせないものになった。

最後にオリヴィエ氏に、「クリュッグ」をひとつの単語で表現してほしいと頼んだところ、なんと3つの英単語を選んでくれた。「GENEROSITY」(寛容)、「FULLNESS」(豊潤)、「EVERY YEAR」(年々歳々)。最後の言葉は、「クリュッグ」には毎年その特殊な醸造法によって当たり外れが生じないという意味である。

なお、「フルート・グラスでシャンパーニュを飲むのは適切でない。とくに『クリュッグ』にとっては。リーデルと共同開発したワイングラスをぜひ使ってほしい」とのことです。

画像提供:MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社

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