「KRUG」は確かに何か一言言わずにはいられない別格の存在なのだ(前編)

イギリスの貴族院議員にして作家のジェフリー・アーチャー(1940~)の小説に「100万ドルを取り返せ!」がある。詐欺にかかった男たちが、詐欺師から騙し取られた金を取り戻す痛快サスペンス小説だ。アーチャーの実体験をもとに書かれた処女作で、詐欺にあって自己破産寸前だったアーチャーは、この小説の大ヒットで借金を完済したと言われている。

この小説を私は大学生の時に読んだのだが、中に恋人同士の「ねえ、君は『ドン ペリニヨン』と『クリュッグ』のどっちが好き?」という会話がある。酒といえば、ウイスキーと日本酒の安酒を痛飲するのが常だった大学生の私は、この「ドン ペリニヨン」と「クリュッグ」をいつしか飲み比べてみたいものだと思ったのを覚えている。その思いが通じたのか、私は最もパーティの多い業界でジャーナリストとして仕事をすることになった。

ファッション業界だと、年間に主だったものだけでも100以上のパーティがある。ファッション、時計、ジュエリー、シューズ、ハンドバッグ、インナーウエア、インテリア、化粧品、スイーツなどなどのアイテムごとに、新製品発表、新店舗オープン、本社CEO来日、創業者来日などことあるごとにジャーナリストを招いてパーティを行うのが、この業界の常である。

そうしたパーティで振るまわれる酒は、1990年以前はウイスキーの水割りが中心だったが、それ以降はスパークリング・ワインが主流になり、現在はほとんどがスパークリング・ワインだ。ちょっとランクが高い、例えばラグジュアリー・ブランドのパーティになるとシャンパーニュ(原産地がシャンパーニュ地方)が供されることになる。

さらに格調が高くなると、いよいよプレステージ・シャンパーニュの「ドン ペリニヨン」や「クリュッグ」のお出ましとなる。この2銘柄は確かに両横綱なのだが、「クリュッグ」は滅多に出てこない。年に1回あるかないかである。

そのため、こんな電話がかかってくる。「あ、申し忘れましたが、そのパーティ、シャンパーニュはクリュッグですよ(笑)」。これは万難を排してでも駆け付けるべきパーティである。「クリュッグ」以外に、パーティの出席率を簡単にあげられる方法を私は知らない。私にとっては、どんな美女や有名人や旨い料理よりもその威力は絶大である。

その「クリュッグ」が自らのイベントとパーティを催すという。嬉しいことにそのイベントに招かれることになった。ランスからはクリュッグ六代目当主のオリヴィエ・クリュッグもこのイベントのために来日するらしい。

その日は9月28日、場所は天王洲アイルの「スタインウェイ」の東京ショールーム。まずKRUG×MUSICで愉しんでもらおうという趣向のようだ。今年の5月にオープンしたばかりのショールームに入っていくと、ウエルカム・シャンパ―ニュとしてクリュッグの「グランド・キュヴェ」がマグナムでつがれる。

久しぶりに味わうが、本当に美味しい。なんとも心揺さぶる贅沢な夜のはじまりである。

中に招き入れられると、クリュッグ六代目当主のオリヴィエ・クリュッグ氏が迎えてくれる。ときおり日本語を交えたウエルカム・スピーチ。

同氏は24、5歳の時に日本に2年ほど滞在していたことがあるのだという。

 

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「KRUG」は確かに何か一言言わずにはいられない別格の存在なのだ(中編)

「KRUG」は確かに何か一言言わずにはいられない別格の存在なのだ(後編)

他にはない味わいを夢見た初代の考えを貫き、1843年の創業以来6世代にわたり伝統の製法を忠実に守り続けるクリュッグ家。芸術にも喩えられるアッサンブラージュと6年以上の長く静かな熟成を経て、独特の深く複雑な味わいが生まれます。

お酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。お酒は楽しく適量で。