作家モノ⁉︎のビスポークスーツに魅せられて

モード逍遥#64

何を書こうかと思案していたら、ふと仕事机の上にある南部鉄器の灰皿に目がとまった。煙草を吸わない筆者はこれをペン皿代わりに使用しているのである。

Photo:Shuhei Toyama

製作したのは、先年お亡くなりになった彫刻家の朝倉響子さん。猫好きとして知られたお父様の朝倉文夫さんの影響もあるのだろうか。十二支の寅をモチーフにしたこの灰皿には、なんとも言えぬユーモアがあって、殺風景な仕事場の空気を和やかにしてくれる。

しかしながら旅先の土産物屋で買った同じ南部鉄器の文鎮や風鈴などは、いつの間にかどこかへ消えてしまった。お気に入りのものは残り、どうでもいいものは姿を消す。こうした自然淘汰は洋服にも言えるのではなかろうか。