最近2つのセミナーを受講して、ファッション&アパレル業界の未来を再び考えた!?

私が受講したセミナーは「未来は予測するものではなく、創造するもの」と題したもの。尾原さんから、アメリカのファッション業界の若い起業家の例が次々と発表された。そのほとんどに「そんなニッチなビジネスが商売になるのかなあ」というリアクションだった私は、「未来は予測するものと考える」大馬鹿者なのかもしれない。そういう小さな起業から、ファッション&アパレル業界でもアップルみたいなビッグカンパニーが生まれるのだろうか。少なくとも私は半信半疑である。

「起業」というのがまだ日本では若い人達に浸透していないということもあるかもしれない。それ以前にアメリカでも日本でも逓減し続けるファッション消費指数(全消費におけるファッション消費の比率)がいつ底を打つのかがポイントだと思う。思い立ったが吉日と言うけれども、何事にもタイミングというのがある。何度も言うが、スマホ・ラッダイト運動でも起こさないと消費者がファッションの魅力を再発見するのは極めて難しいと思う。

そもそもファッションに魅力は残っているのか? どうしても尾原さんが説く「創造する未来」というのが綺麗ごとにしか思えない。もう少し地獄は続くはずである。明るい未来を語るのはちと早すぎる。

ある業界のパーティで、大手アパレルの役員同士が「ねえ、あの殺すだか、死ぬのだかの本、読んだ?」と話をしているのが聞こえた。このコラムでも取り上げた「誰がアパレルを殺すのか」(日経BP)のことを話題にしているらしい。「ほんとにほっといて欲しいよね」とかなりお怒りの御様子だ。「それなりに我々はやるべきことはやっている、素人のおまえたちにツベコベ言わせないぞ」、という感じだった。少なくとも矜持はあっても反省はそこにはなかった。

私は、ファッション&アパレル業界を35年間観てきたが、ひとつだけ確実なことは、どんなに栄耀栄華を極めた企業でもブランドでも、一度本格的な低迷基調に入ったら、復活は難しいということである。これは、復活する例がないわけではない他の業界と決定的に違う点だろう。とにかく選手交代したら、退場した選手はもうグラウンドやピッチに立てないのと同じである。若い女子や男子から「それ、何?知らないわね」って言われたらジ・エンドなのである。だから生き残るためには、低迷基調が本格的なものになる前に、さっさと有効な手を打つだけの観察力と実行力が求められる。

その好例を、8月30日に受講した小島ファッションマーケティングのセミナーで聞いた。ゲストスピーカーとして登場した松下正・アダストリア代表取締役最高執行責任者(COO)の発言が実に興味深かったのだ。松下氏は東京青山法律事務所、ファーストリテイリング、シーメンス、コクヨなどを経て2年前に同社入社。アダストリアは「ローリーズファーム」に代表されるゼロ年代の成長の後、何度かジ・エンドに近い危機(最大の危機は外注していた生産・デザイン機能を内製化したこと)にさらされながら、最近は2018年2月期連結決算で年商2,036億円、当期利益115億円と完全復調してみせた。その立役者が松下COOだったわけだが、同社は次の経営目標として4つの改革(売るもの改革、作り方改革、売り方改革、働き方改革)を推し進めながら、連結年商5000億円をめざすという。

松下正・アダストリア代表取締役COO/Photo:Akira Miura

松下COOは「主なファッション&アパレル&スポーツ企業の成長の軌跡を分析してみたが、売り上げの大きい企業ほど成長率が高いことがわかった。売り上げの小さい企業で成長率が低い企業は泡のように底に飲み込まれてしまっている。我が社も、次のステージでは、5,000億円程度までのスケールアップが必要だという結論に至った」としている。ある意味、市場の寡占化が進んでいることを同COOは明らかにしているわけだが、少なくとも「多様化するファッション市場」というような常套句の使用は慎まなければいけないと肝に銘じた。

巨大化した恐竜は生き残れなかったが、果たしてファッション&アパレル市場ではどうなるのだろうか。

Photo:Akira Miura