菜園(ポタジェ)をアートの領域にまで高めている⁉︎ヴィランドリー城

「フランスの庭」と讃えられるロワール地方。数多くのシャトーと美しい庭園を有して、ロワールのシャトー巡りのツアーは今なお人気のスポットとなっている。それぞれの城には特徴があり、その歴史的背景も興味深いし、よく手入れされた庭園も大変美しく、訪れる人を心地よくさせてくれる。

しかしそればかりではない。筆者に大きく目を見開かせたのがヴィランドリー城のポタジェと呼ばれる菜園の見事さである。「見せる」菜園、つまり食卓にのぼる野菜やハーブを育てる畑ではなく、野菜をいかに美しく植栽するかということに心を砕き、実践しているジャルダン・ドゥ・ポタジェで、それはとりもなおさずアール・ドゥ・ポタジェなのである。

シャトーの部屋から眺めたポタジェの全景。9つの正方形の区画とデザイン、野菜がよくわかる。/Photo:Ayako Goto

ヴィランドリー城はフランス屈指の美しい庭園でよく知られている。城門を潜ると目の前に広がる庭園は5ヘクタールという広大なスペースだ。庭園は高低差のある地勢を生かしたデザインになっていて、3段階のひな壇式に構成されている。

水の庭園、装飾庭園、菜園に分かれ、上段は水の庭園で、刈り込んだ菩提樹が並木道を作り、その下の池(運河)の側は葡萄棚になっている。とても静かな一角で、気持ちいい空気が流れている。中段は城の建物と同じ高さにあたり、そこはフランス人がもっとも好きなアムール(愛)が象徴的なデザインのテーマになっている。それは「優しい愛」「移り気な愛」「熱烈な愛」「悲劇的な愛」の4つで、それぞれが幾何学的なデザインになっていて、図柄や花の色に意味を持たせている。

例えば扇の形は移り気な愛、そこには愛のライバル同士の決闘で流された血を象徴する赤い花を植えるといったように。ここの装飾庭園を見ているとまるで草花で織られた野外タピスリーのように感じる。

下段は菜園である。ここには芳香性のある薬用植物であるハーブ約30種が中世の頃と同じように栽培されている。ポタジェはヴィランドリーの庭園で最大のスペースを誇り、同じサイズの9つの正方形の区画から成り、中世の修道士たちがポタジェに彩りを与えるために薔薇の木を植えたのを現在もそのまま生かしている。

またコーナーごとにアーチ型のガゼボが設置されているが、これはイタリア式庭園からの影響で17~18世紀にフランス式庭園でも、またイギリス式庭園でも導入されたものだという。庭園の散策に疲れたらつる薔薇でおおわれたガゼボでちょっと一休み。薔薇の香りも漂ってきて、う〜ん、至福のひと時を味わうことができる。

つるバラを絡ませたガゼボ。一休みするのにとても便利。/Photo:Ayako Goto

9つの区画のポタジェをよく見ると、幾何学的にデザインされていることはもとより、野菜の色合いもよく計算されている。庭園を散策しているときにはそれほど気づかないが、城の中に入って上から見下すかたちで眺めるとそれがよくわかって、感動する。アール・ドゥ・ポタジェ、また一つフランスのアール・ド・ヴィーヴルが広がった。

Photo:Ayako Goto