【銀座中毒者100人×100点】お箸を通じて人生が楽しく豊かになる

銀座夏野さんはお箸の専門店です。お箸って身近なもので、また地方の観光地にいけばお箸の専門店ってよくあるんですけども、この夏野はひと味ふた味違います。

お箸って身近だけど、こんなお箸をこんな時に使うと楽しいよ、たとえばスパゲティ専用のお箸とか、職人が作ったそれひとつしかない箸とか、人生を愉しむのに、お箸とか、あるいは食器とか、こんなに役に立つんだよ、ということを店の中にいるだけで兎に角目一杯提案してくれるんですね。

「お箸」を売っているんではなくて、「お箸」を通じてこんなに暮らしが豊かになるんですよ、ということをすごくイメージできる店舗であり、店員さんや社長の人柄でもあるんです。なので、「お箸」専門店としては非常に繁栄していて、最初は銀座だけだったのか、今は全国にたくさん店舗ができたんです。

この「夏野」の会長さんは実は僕が小学校の時教わっていた塾の先生で、塾を日本有数の会社に育て上げたあと手放して、趣味としてこのお店を始めたらしいんですが、ものすごく凝り性で、何より「人生は愉しむもの」という思想が徹底している人で、小学校の時からずっと「素直が一番だよ」「人生は楽しいよ」と勉強より何よりずっとそこを教えてくれた人なんです。その先生は東大の理系出身で、僕も同じなんですが、それが今は僕も先生も日本の文化を「売る」仕事をしている、という共通の場所に来てしまったことも、人生の偶然ですね。

ここの箸は「楽しい」だけでなくて、人生の「運」がつく、「人生は楽しいよ」、という念波が伝わってくる、そういう箸だと思います。

銀座の表通りだけ来る人には、ユニクロだったり、三越だったり、大人の「繁華街」だろうし、会社のお偉い人には「夜の社交場」だったりするんでしょうが、銀座で仕事をしていてわかるのは、「個人商店」の集まり、という要素が最も大きな要素だということです。画廊は実はまさに「個人商店」の性格が強い商売ですが、全国の画廊のうち、その半分近くがこの「銀座」に集結している。画廊の密集地であることは、銀座が「顔の見える商売」の総本山であることを象徴しています。

「高級店」というと、デパートなんかに入ってお高く止まっているブランド店で、なんとなく慇懃無礼なイメージがありますが、路地裏の「高級店」を尋ねると、洋品店であれ食堂であれ、とても人懐っこい顔をしているのに気がつく。ドーンと区画整理して都市計画にもとづいて作った『街』には、路地がないし、路地裏もないけど、銀座は「路地裏」の寄せ集めでもあり、そこには大衆店もあればビックリするような高級店もある。

僕は京都の生まれなんですが、京都と同じような奥深さがあると思います。まだまだ、僕も知らないことの方が多いですけども。なので、表通りだけでなくて、どこか一件、顔なじみの店を作って、銀座の街の面白さを探検してくれたらいいな、と思いますし、僕にも面白い店があったら教えてほしいです(笑)。

銀座夏野の「お箸」

日本人に最も身近な漆器・お箸の専門店。銀座への出店を皮切りに、現在では子ども用のお箸・和食器を販売する姉妹店「小夏」など全6店舗とオンラインショップを展開。「スパゲティ箸」1,500円(税抜)、「京塗 玉虫七宝箸」13,000円(税抜)。価格帯は800円~10万円、最高額では200万円のお箸も取り扱う幅広さ。きっと自分にぴったりの“本物のお箸”と出逢えるに違いない。

店舗情報

銀座夏野
住所:東京都中央区 銀座6丁目7−4 銀座タカハシビル 1F
電話:03-3569-0952
時間:月~土10:00~20:00、日・祝10:00~19:00

田中千秋
株式会社秋華洞代表取締役社長

美術や古書画に親しむ育ち方をしてきましたが、若い時の興味はもっぱら映画でした。美術の仕事をはじめて、こんなにも豊かな美術の世界を知らないで過ごしてきたことがなんと片手落ちだったかと思います。前職SE、前々職の肉体労働(映画も含む?)の経験も活かして、知的かつ表現力と人情味あふれる、個人プレーでなくスタッフひとりひとりが魂のこもった仕事ぶり、接客ができる「美術会社」となることを目指しています。そして美術と社会の距離を縮めたい。