米国元大統領と同じ仕様のドレスシャツを、カスタムメイドしてみると⁈

インディビは、長らくブルックスブラザーズのカスタムメイド部門のシャツを製作してきた名門。ならばケネディのドレスシャツを製造したことがあるのではないか。期待をこめて質問したところ、「私の知る限りその事実はありません。でも念のために事実関係を再度確認してみるが」と、真っ正直に答えてくれた。

これがイタリアのシャツ屋なら、ろくに調べもせずに「そりゃウチだよ!」と、大ぼらを吹かれるのに慣れっこになっていたから、残念な結果であったが、社長の飾らない答えに爽やかな気持ちになった。

するとヘイサー氏、気の毒に思ったのか、「顧客情報を公開するのは好まないのだけれど、大統領の何人かは作ったことがある。たとえばパパ・ブッシュ(41代米国大統領、ジョージ・H・W・ブッシュ)とかは長年の上顧客だ」と、教えてくれたのである。

とはいっても、パパ・ブッシュがインディビに直接シャツをオーダーに来ることはないそうだ。インディビは米国の主要都市にある著名なメンズクロージンストアと契約していて、店で受けたカスタムシャツの注文を製作する、という商売を続けてきたからである。

パパ・ブッシュもテキサスにあるナントカというお店(あえて名を伏す)で、いつも同じスタイルのシャツを注文しているのだという。

民主党大統領のシャツでは空振りしたが、共和党大統領好みのシャツとはどういうものなのか、好奇心はふくらむ。そこで筆者は、パパ・ブッシュ好みの白いドレスシャツを誂えてもらうことにしたのである。

というのも以前読んだ何かの雑誌で、パパ・ブッシュの着こなしは典型的なWASPのものだ、と紹介されていたからだ。これまで、ジェノバやジャーミンストリートやパリなどの著名なシャツ店の製品は着たことがあるが、富裕なWASPの好むシャツは試したことがなかった。しかもパパ・ブッシュは最近の大統領のなかでは、指折りのウエルドレッサーとして知られる。

数週間後に送られてきたシャツは、主張し過ぎず、しかもただの仕事用シャツほど味気なくない、シンプルで着込むほどに愛着がわく上質な白いシャツであった。

以下ディテールを記す。衿型はミディアムスプレッド。フロントはトップセンターフロント。胸ポケットはなし。バックスタイルはプレーンバック。ボタンは白。衿のライニングはレギュラー。またカフススタイルについては、パパ・ブッシュはシングルのラウンド型とフレンチカフの両方を愛用しているが、今回は後者になっていた。スーツの袖口からカフリンクスが見えるように、ホール位置をセンターから前方へずらしている工夫はさすがである。

素材については、ヘイサー社長が「パパ・ブッシュはいつもこの生地の中から選んでいるよ」ということで、もっとも高価なスワッチ(生地見本帳)からアルビニ社の140番手双糸のロイヤルオックスフォードが選択されていた。

日本でインディビといえば、ボタンダウンシャツやトラッドな柄のカジュアルシャツの印象が強いのであるが、じつはドレスシャツにおいても、このように奥深い逸品を作る実力を備えているわけである。

筆者としては、オックスフォード・クローズなどのスーツに合わせるドレスシャツが、ようやく入手できて喜ばしい限りである。

Photo:Shuhei Toyama