パリのフルリストは紫陽花が大好き!?

フランスの田舎の庭に咲く紫陽花/Photo:Ayako Goto

花とアール・ド・ヴィーヴル♯13

梅雨の頃に咲く花といえば紫陽花が真っ先に挙げられるだろう。日本ではどこの家の庭にも植えられているほど、ポピュラーで身近な花だ。庭に咲く花というイメージが強いせいか、最初にパリのお花屋さんで切り花として見かけたときはずいぶん意外な気がした。

ここ十数年来、パリの紫陽花は進化し続けている。ひと枝に咲くヴォリュームのある大きさは他の花に比べて一段と大きく、さまざまなかたちの花びらと色のバリエーションも驚くほど豊富になっている。「パリの紫陽花」という表現は、実は正確ではない。品種改良はオランダでほとんどが行われているからだ。しかし、パリのフルリストの手にかかり一つのブーケになると、えも言われぬハーモニーが生まれ、まるで紫陽花であることを忘れてしまうほど、それぞれの花が溶けあい、引き立てあっている。

フルリスト側から見れば、紫陽花は他の花との大小のヴォリュームのとり方やニュアンスに富んだ色合いに十分な手応えを感じるのだろう。それに1本(それ自体)でも美しい。

だからパリのフルリストにインタヴューすると「オルタンシア(紫陽花)が好き」と答えるのだと思う。フルリストに支持されるから生産者はますます頑張って新しい色に挑戦する。先日、パリ郊外にある花市場に行ったら、そこには枯れたような色合いの茶色の紫陽花、より正確に表現すると緑を含んだ茶色の紫陽花があった。まだパリのお花屋さんでは見たことのない色である。

パリの花市場で見かけた珍しい色の紫陽花たち。特に、茶系の紫陽花は先端カラー/Photo:Ayako Goto

今、パリのフルリストで人気の紫陽花は、薄いピンクに黄緑がイレギュラーに混じったタイプである。紫陽花らしくない色合いで、それが新鮮であり2色なのでブーケにするときに色のバランスが取りやすい。

ところで紫陽花は日本原産の植物である。その花が今、パリで大変もてはやされている。鎖国をしていた時代にオランダの出島からシーボルトが持ち帰った紫陽花。それがヨーロッパに根づき、フランスの地方の家の庭に植えられているのをよく目にする。特に多いのはブルターニュ地方である。ブルターニュは緯度でいうと日本よりかなり北に位置するが、メキシコ湾流の影響で温暖な気候である。そのせいか、11月でも多くの紫陽花が咲いていて驚いたことがある。

ブルターニュ地方の北、ノルマンディ地方には紫陽花園もあり、そこには日本から取り寄せた数多くの品種の紫陽花が広大な敷地に植栽されている。他にも紫陽花が美しく咲くスポットがいくつかある。そしてノルマンディの紫陽花を見に行くイギリスからの観光客も多いそうだ。

日本のようにフランスでも地植えの植物として身近な存在となった紫陽花。パリの高級住宅街として知られるヌイイではアパルトマンの建物の前に紫陽花が植えられていた。垣根とは違うが、石造りの建物に緑を添える効果は大きい。パリ市内ではこうした例は見かけたことはないが、これは建物と道路の敷地面積との関係であろう。

ヌイイの建物の前に植栽されている紫陽花/Photo:Ayako Goto

万葉集にも歌われている紫陽花、また江戸時代には葛飾北斎によって描かれた紫陽花があり、俳句では夏の季語になっている紫陽花など、私たち日本人に親しまれてきた紫陽花である。

source:http://free-artworks.gatag.net/

ところで、これまで「紫陽花の花」と表現してきたもの、実は花びらに見えるものは萼(がく)であること、知っていましたか? でもそんなことどうでもいいですね。梅雨の時期に咲く紫陽花、やっぱり美しいです。

Photo:Ayako Goto