ダシュウッド・ブックス店主が作るダウンタウンカルチャーと写真の未来(前編)

店名のダシュウッドとは彼の祖父の名前で、デヴィッドのミドルネームでもある。店の地下にはポロ競技用の馬に颯爽とまたがったダシュウッドの古い写真が壁に貼られていた。

「当時は英国領だったインド(現パキスタン)で彼は領事をしていたんだ。イギリスでも珍しい名前でアッパークラス風なんだけど、僕自身はぜんぜんアッパーじゃないから昔はよくからかわれた(笑)。でも、今となってはそのオールドファッションな響きや由縁に親近感も湧く 、だから店名にしたんだ」。

Photographs by Akiko Ichikawa

開業して12年。移り変わりが早いこの街で10年以上商売を続けるのは容易いことではないだろう。しかしダシュウッドに一歩足を踏み入れるとわかるのだが、ここは独特な時間の流れがある。老若男女いろんなタイプのお客さんを見かけるが、共通点はみんな写真が大好きなことだ。

「この10年、全てのリテールビジネスは世界的に変革期を迎えている。2008年のリーマンショックの後くらいから、お客さんが王様みたいに全ての決定権を持ってインターネットで物を買う、という時代になった。

今、店舗はどうやってお客さんを店に連れてくるか? というのを考えなくてはならない。 だからこそ接客がとても大事。特に書店は洋服屋なんかとは違って、何千冊もある“商品”の内容がぱっとは分からないから、知識を持ったスタッフのヘルプが必要なんだ」。

Photographs by Akiko Ichikawa

「ダシュウッドが“街角のバー”みたいな場所になったらいい。店のスタッフとの会話や品揃えが好きで通ってくれる地元の常連客、西海岸やヨーロッパなどから訪ねてくる旅行客、写真家やアーティストなどクリエーターたち。この店との繋がりを感じる人々が集うコミュニティを作りたいと思ってやってきた」。

まさにバーのマスターといった風情や貫禄も漂う彼のもとには連日若手写真家が作品を見せにやってくる。写真もデジタルが全盛になった今もなお、ミレニアル世代ともいわれる写真家の卵たちは紙にプリントした手作りのZINEを抱えてダシュウッドの門を叩く。

「僕らはローカルな写真家の本もよく出版しているから、そのことが彼らをひきつけるんだろうね。そして例えばユルゲン・テラーとかリチャード・プリンスといったような大御所もちょくちょく来ているから、彼らとカジュアルな形で会える、というのも若い子たちには刺激的みたい」。

<後編>へ続く

ダシュウッド・ブックス店主が作るダウンタウンカルチャーと写真の未来(後編)

Name: David Strettell   デヴィッド・ストレッテル
Occupation: ダシュウッドブックス オーナー
Location: ノーホー、マンハッタン
https://www.dashwoodbooks.com/

Photographs by Akiko Ichikawa