行きつけの店を持つことの意味は?

何回ぐらい通ったから行きつけの店、というきまりはない。あるジャンルの中でそのお店に行く回数がけっこう多く、さらにお店の人に覚えてもらっていたら、そこは行きつけの店といえそうだ。

私は昔から、外食の機会が多いのでいろいろなレストランに行く。その中で何となく和食ならここ、イタリアンならここ、フレンチならここ、中華ならここ、とジャンルごとに行きつけの店が数軒ある。

けれども、そもそもこれまでにそんなに外食の経験がない場合、行きつけの店はどのように作るか? それについては以下のような方法がある。

まずはテレビや雑誌で紹介されて気になったお店に実際行ってみることだ。見たり読んだりして「いいな、行ってみたいな」と思っても、忘れてしまうのがほとんどなので、気になる店をメモをしておく。誰かと食事に行く際に行ってみるのがよい。

そして実際に行ってみて気に入ったら、短期間に何度か通ってみることをおすすめする。お店の人に忘れられない程度にあまり間を置かずに通えば必ずお店の人が覚えてくれる。

次に、今まで上司や友達が連れて行ってくれたお店に自分でも行ってみることだ。気に入ったお店であれば、自分でも通って「自分のお気に入りの店」にする。「いいお店だったな、美味しかったな」と思っても、まだ実際に行かなければ忘れてしまう。かなり経ってから行こうとしても店の名前すら覚えていなかったりするので残念だ。

そしてこの場合もまた、気に入ったお店であれば、間を置かずに行ってみる。1週間後、あるいは10日後であれば「先週●●さんと一緒に来た」と言えばお店の人も覚えてくれているし、すぐにまた来てくれたことを喜んでくれるだろう。

仕事の会食で相手にご馳走になった場合は、予算感もわからなかったりする。お店のウエブサイトにメニューが出ていたとしても、お酒を飲んで、さらにサービス料が入ると、どのくらいの金額になるのかは実際食事をしてみないとわからない。

素敵なお店だったからと、いきなり次の接待で訪れると、予算オーバーになってびっくりすることこともあり得るので危険だ。まずはプライベートで訪れるのが大事だ。予算的にも利用しやすいお店だなと思ったら、また何度か、あまり間を置かずに行ってみる。そうするとお店の人は「●●さんの知り合い」から「●●さん」と、自分の名前と顔を把握してくれるようになり「行きつけの店」になる。

行きつけのお店の条件は、私の場合、①お店の人の感じがいいこと。どれだけ美味しくて、素敵な店構えでも、お店の人が、ちょっと感じが悪かったり愛想がなかったりすると居心地が悪い。反対にお店の人の感じが良いと「また来たい」という気持ちになるものだ。②美味しい店であること。これは不可欠だ。③店内のインテリアにある程度こだわっている。化粧室にまったくこだわっていなかったり、清潔感がないとがっかりする。④値段と内容があっていること。コストパフォーマンスがよい店は行きつけになりやすい。そして高級なお店でも内容と見合っていればよい。どんなに話題の高級な店でもホスピタリティがよくない店はそれっきりになることが多い。

そうは言っても、行きつけでなくてもほかに店はたくさんあるし、次から次に新しい店が出来るのだから、同じ店に何度も行く必要はないのではないか、と思う人もいるかもしれない。

けれども「行きつけの店」を持つのは理由がある。例えばビジネスの場で、急に会食が決まった場合、行きつけのお店があればある程度の融通を効かせてくれるからだ。

例えば個室を取るのは4人以上が条件でも、3人でも対応してくれたりする。あるいはアラカルト中心のお店でも、予算を伝えて特別にコースを作ってくれたり、もしくは予算に合わせてメニューを考えてくれたりする。たとえば、ある店は7000円からのコースしかなくても特別に5000円のコースを作ってくれたことがあった。

今は接待費も限られているので、ふんだんにお金を使えるわけではない。その点を考慮してもありがたいサービスだ。

案内される側も、行きつけのお店に連れて行かれるととても居心地が良い。お店の人とのやりとりもスマートで、常連として振舞っている人は一目置かれるだろう。その店のいちおしのものが食べられるのも心地よい。いつもの仕事とはまた違った側面を見せられるのだ。

逆に初めてのお店ゆえ、接待している側がぎくしゃくしていると、その緊張感が伝わってしまい、相手も居心地が悪くなる。そういうとき「好きなものをどうぞ」とすすめられた方は、何を頼んだらよいの?と困ってしまうのだ。せっかくの接待も逆効果である。

急な店選びに困らないようにふだんからリサーチをしておくと安心だ。出来れば各ジャンル一軒すつでも行きつけのお店を持っておけば、より多様な状況に対応できるので、筆者は自信をもっておすすめする。

Illustration:Nao Sakamoto