ピノ・ノワールの虜となった⁉︎ロバート・モンダヴィの孫による気鋭ワイナリーRAEN

ワイン縦横無尽#34

RAENと書いて「レイン」と読む。「Research in Agriculture and Enology Naturally」の略称で、発音的には雨の「レイン」にかけている。雨は土に吸収された後、ブドウの根に吸い上げられ、やがてブドウの果汁となる。ワインにとって、かけがいのない存在だからだ。

このワイナリーを4年前に立ち上げたのは、前回、ご紹介したティム・モンダヴィの息子、つまり、故ロバート・モンダヴィの孫にあたるカルロとダンテの兄弟。しかし、父がナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたプロプライエタリーワインに集中する一方、ふたりが手がけるのは冷涼なソノマ・コーストのピノ・ノワール。それもばりばりのブルゴーニュ・スタイルだった。

カルロ・モンダヴィ/Photo:Tadayuki Yanagi

2002年にブルゴーニュで修行し、すっかりピノ・ノワールの虜になってしまった長兄のカルロ。とくにドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ、ドメーヌ・デュジャック、ルロワといった、全房仕込みのワインに魅せられ、カリフォルニアでもこの手法を踏襲する。

全房仕込みとは、読んで字のごとく房のまま醸造すること。ワイン醸造ではブドウから梗(粒をつないでいる軸のこと)を取り除き、粒のみにして発酵槽に投入する手法が主流だが、ピノ・ノワールの伝統的醸造法として、この全房仕込みを好む造り手がいる。

「全房仕込みにすると、バラの花びらのような素晴らしい香りがし、ミッドパレットのタンニンが滑らかになる」とカルロ。

現在、ワインは3種類。今回、カルロが日本で紹介したのは3ヴィンテージ目となる2015年のワインだった。

「ソノマ・コースト ロイヤル・セント・ロバート・キュヴェ」(10,500円)は、海からわずか6キロ。標高132メートルの位置にある2.6ヘクタールの単一畑。キュヴェ名の”ロバート”はもちろん、カルロたちの祖父であり、偉大なるメンターであったロバート・モンダヴィのこと。美しいルビー色をし、バラやスミレの香りにラズベリーやチェリー。味わいは凝縮感に富み、果実味が素直に出ている。

ソノマ・コースト ロイヤル・セント・ロバート・キュヴェ/Photo:Tadayuki Yanagi

「フォート・ロス・シーヴュー ホーム・フィールド・ヴィンヤード」(16,000円)はソノマ・コーストのサブリージョンとして新たに誕生したAVA(=アメリカ合衆国ブドウ栽培エリア、フランスやイタリアの原産地呼称に相当)のフォート・ロス・シーヴューから。丘の斜面にある1.6ヘクタールの単独所有畑だ。標高は300~350メートルの高地にあり、したがってブドウ畑は太平洋からの冷たい霧の上に出る。日照量が多いため、タンニンが強そうだが、「むしろ逆。シャンボール・ミュジニーのようにシルキー」とカルロ。これもバラやスミレのフローラルさに、少し紅茶の雰囲気があり、スパイシーな余韻。なによりピュアな酸味が印象的だった。

フォート・ロス・シーヴュー ホーム・フィールド・ヴィンヤード/Photo:Tadayuki Yanagi

「フリーストーン・オキシデンタル ボデガ・ヴィンヤード」(16,000円)は海から6キロ。ロイヤル・セント・ロバートの近くにある0.5ヘクタールの単独所有畑。フリーストーン・オキシデンタルはまだAVAとして認められておらず、AVAはソノマ・コーストだ。ブルゴーニュ並みに1メートル×1メートルの密植で栽培されている。フォート・ロス・シーヴューよりも若干集中力が増し、緻密でキメ細かなタンニン。果実味で勝る一方、酸味のバランスはフォート・ロス・シーヴューに一歩譲る。個人的にはフォート・ロス・シーヴューの慎ましいエレガンスが好み。

フリーストーン・オキシデンタル ボデガ・ヴィンヤード/Photo:Tadayuki Yanagi

「先日、DRCのラ・ターシュやデュジャックのヴォーヌ・ロマネ・マルコンソールを混ぜて、僕たちのワインをブラインドテイスティングしたところ、誰も判別がつかなった。これらのワインに匹敵することが証明できたと思う」と、自信満々のカルロ。

16,000円というとトップドメーヌの1級畑並みの値段だが、とくにフォート・ロス・シーヴューはそれ以上の価値がある。2016年からシャルドネも醸造も少量ながら始めたらしい。カルロとダンテの今後の活動に注目したい。

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ワイン・イン・スタイル 03-5212-2271

Photo:Tadayuki Yanagi