シャンパーニュと日本茶、どっちの美味しさに軍配?

シャルル・エドシック/Photo:Yuji Komatsu

ワイン縦横無尽#32

3つあるエドシックの中で、日本にとって馴染み深いのは赤いラベルでお馴染みのパイパー・エドシックであろうが、じつはより玄人好みのメゾンとして知る人ぞ知る存在がシャルル・エドシックである。メゾン創設翌年の1852年にシャルル・カミーユ・エドシックは単身渡米。未開拓のアメリカ市場にシャンパーニュを売り込み、”シャンパン・チャーリー”の愛称で親しまれた。その波乱万丈の人生はヒュー・グラント主演で映画化されたほど。

そのシャルル・エドシックからシェフ・ド・カーヴのシリル・ブランが来日し、プレス関係者を前に面白い試みを披露。シャルル・エドシックのロゼ・シャンパーニュと日本茶との比較試飲である。日本茶は創業300年の歴史を誇る「一保堂」の煎茶と抹茶だ。

シャルル・エドシックのシェフ・ド・カーヴ、シリル・ブランによるプレス試飲会/Photo:Yuji Komatsu

シリルは来日のたびにシャンパーニュと日本茶の共通性を感じていたという。果実と葉の違いこそあれ、シャンパーニュのブドウ畑と日本の茶畑の景観はよく似ているし、なによりシャンパーニュはアッサンブラージュ、日本茶は合組と呼ばれるブレンド技術がキモだ。

さらに茶葉にはテアニンと呼ばれるアミノ酸が含まれ、これが日本茶の旨味成分となる。テアニンは日光が当たると渋み成分のカテキンに変化するので、旨味成分を失わないよう、高級な茶は日を遮って育てるのだとか。

「シャンパーニュは暗いカーヴ(地下セラー)の中で熟成することにより、旨味が醸成されます」とシリル。シャンパーニュは気泡を発生させる瓶内二次発酵の後、役目を終えた酵母とワインが瓶の中で長期接触することで旨味が増す。なぜなら酵母は栄養となる糖分を食い切った後は自己消化を起こし、その際にアミノ酸を生み出すからである。

このイベントでは、一保堂の「くき煎茶」とシャルル・エドシックのロゼ・レゼルヴNV、同じく抹茶「雲門の昔」とロゼ・ヴィンテージ2006をサイドバイサイドで試飲。雲門の昔は90パーセント遮光した最高ランクの抹茶で、8年熟成のロゼ・ヴィンテージとの旨味対決となった。

製法に共通点のあるお茶とシャンパーニュ。比較試飲は果たして・・・/Photo:Yuji Komatsu

さて、シリルのコメントはシャンパーニュではなく日本茶のほう。

くき煎茶
「お花のような春の香り。柚子やグレープフルーツなど柑橘の香りも感じられます。ヴェジタルな雰囲気もあり、余韻の中に刺激的な、リフレッシュさせられる要素もありますね。何杯もお代わりしたくなる」

雲門の昔
「外観からも厚み、クリーミーさが感じられ、パプリカやホウレンソウのようなヴェジタルさ。口に含むと乳酸発酵のニュアンスも。日曜日にゆっくりと、時間をかけて楽しみたいお茶です」

「ロゼ・レゼルヴNV」は2008年をベースにリザーヴワインを20%アッサンブラージュ。シャンパーニュ地方南部リセイ村のピノ・ノワールから造られた赤ワインを5%加え、美しいサーモンピンクの色調に仕上げられている。09年に瓶詰め、16年に澱抜きだから7年熟成。それでも溌剌とした味わいで、08年らしい豊かな酸味と赤ワインの果実味、リザーヴワインと熟成期間による複雑味がよい按配でバランスしている。

「ロゼ・ヴィンテージ2006」はリセイのほか、モンターニュ・ド・ランスのピノ・ノワールによる赤ワインが8%加えられており、NVよりも濃い色調。チェリーやイチゴなど赤い果実のフレーバーに、モカやカカオの香ばしいタッチ。泡立てた抹茶にも似たクリーミーなテクスチャーと余韻に広がる旨味。さすがヴィンテージ、NVと比べて力感に勝る。

「年中仕事でグラスを回す癖がついていて、飲み物を手にとるとついつい回してしまう。京都で日本茶の茶碗をくるくる回していたら、宇宙人を見るような目で見られました」と語るシリル。今晩もシャンパーニュ地方の自宅で茶碗を回しながら、日本茶を楽しんでいるのかもしれない。

お問い合わせ
日本リカー 03-5643-9772

Photo:Yuji Komatsu