酒税が国を支えた時代があった!?

日本酒、ビール、ワイン、焼酎、ウイスキー等すべての酒類には「酒税」という税金が課税されています。平成27年度の酒税総額は約1兆3378億円で、国の税収のおよそ2.2%。うち日本酒の課税額は約635億円です。酒税の額は種類によって異なりますが、日本酒に掛かる税金は1リットルあたり120円。一升瓶(1.8リットル)なら216円、四合瓶(720ml)なら86.4円。居酒屋で一合徳利(180ml)を頼んだら21.6円を国に納めるというわけです。これらの税金は我々メーカーから出荷した時点で課税され、蔵元から毎月税務署に報告して納税します。お給料日の大吟醸も一合徳利なら21.6円(日本酒は種類を問わず税率は同じ)。わずかとはいえ、お国に貢献しているかと思うと、大人になった自覚もより深まろうというものです。

現在、国の税収の柱となっているのは所得税や住民税、法人税。それらに比べると随分控えめな存在の酒税ですが、かつてそんな日本酒が日本の税収の3割以上を占めていた時代がありました。

そもそも、日本酒に税金が掛かるようになったのは室町時代。この頃急成長した酒業界を幕府が財源として活用したのがはじまりのようです。その後江戸時代には酒株制度(一種の免許制度。江戸時代を通して何度も「酒株改め」として改正が行われた)により酒税の統制が行われました。明治時代に入ると政府は「酒株制度」を廃止し酒造税を設けます。政府の税源として有望視された酒税はどんどん税率が高くなり、ついに明治23年には地租を抜いて歳入第一位となりました。この背景には、酒が人々にとっての必需品であったことや、当時の日本酒産業が伸びていたこと等があげられます。一部の造り酒屋は地主として地域産業の中心的な存在であり、蔵の体力もあったのでしょう。酒税はその後も増税が繰り返され、日清戦争と日露戦争を支える柱にまでなったのです。

こうした構造は昭和初期まで続きますが、昭和15年(1940年)の税制改正(日本酒が主であった「酒造税」はビールなどすべての酒類を体系に含んだ「酒税法」として新たに施行)以降、変化していきます。税源は直接税にシフトしていき、市場の酒離れも相まって酒の税収は低下を続け現在に至ります。酒税が国を支えた時代とは、まことに隔世の感があります。

ところで、政府は2023年10月に向けて酒類の税制を改正する方向であるそうな。実現すれば日本酒の税額は少し低くなる見込み。新社会人、いえ、すべての成人に嬉しいニュースになりそうです。

Photo:Nishiyama/shutterstock