波佐見の陶磁器は、“新しいトラッド”である!?(後編)

アートうたかたの記#12

古来から約400年にわたり、上質の日用雑器を世に送り続けてきた陶器の産地、長崎県波佐見町の取組みを紹介するコラムの後編である。

昨年12月からこの2月にかけて、波佐見の若手アーティストによるイベントが、東京・木場のギャラリー EARTH+、京都文化博物館ミュージアムショップLUCKで開催された。

波佐見町には、窯業と農業を中心に伝統的な地域文化が継承され、世代を超えたコミュニティーが根強く残っている。

そこで、町の担い手となる若手クリエイターたちが立ち上がり、今後ますます過疎化・少子化が進み、後継者となる職人や従事者が減っていく未来を見据え、独自の地方創生プロジェクトを発動。「HASAMIコンプラ プロジェクト」を発足し、観光事業にも少しずつ波及効果が現れつつあるという。

「コンプラ瓶」とは、ポルトガル語で仲買人を意味するコンプラドール(Comprador)に由来し、19世紀に海外輸出用の酒や醤油を入れるために作られた瓶のこと。「JAPAN ZAKI(日本の酒)」「JAPAN SOYA(日本の醤油)」とオランダ語で染付が施された、その独特の形は時代劇などで見覚えのある人もいるだろう。

波佐見では、輸出に耐え得る強度と機能美を備えたこのコンプラ瓶を量産してきた。長崎からインドネシア、オランダを経由して欧州へ輸出され、文豪トルストイがコンプラ瓶を一輪挿しに使っていたという記録が残っているほど普及していたらしい。

いまではキャンドルを入れて灯篭としても楽しまれている「コンプラ瓶」をプロジェクトのシンボルとして、彼らは現代的なアートの視点で新たな価値を提示していく意気込みだ。

12月、東京の展示会では、ギャラリーに入るなり目に跳び込んできた光景に一気に高揚させられた。天井の高い空間を存分に生かした設えは波佐見出身のアーティストたちの共作である。

東京で行われた展示会の様子/Photo:Chie Yamashita