今一番儲かっているファッション企業マッシュHDは何故そんなに凄いのか!?

砂漠のような東京でも…
週刊ファッション日記#41

よく聞かれる質問がある。

「今、儲かっている日本のファッション企業って何ですか?」
「ZOZOタウンやっているスタートトゥデイですかね」
「そういうネットショッピングの会社じゃなくて、ちゃんとした洋服作ってる会社では?」
「んーん、スポーツ系だとヨリドリミドリですけどねえ」
「スポーツ系とか『ユニクロ』じゃなくてちゃんと洋服作っている会社で絶好調企業はないんですか?」

こういう問いの返答に窮してきた。そういう企業がなかなかなかったのだ。それが最近堂々と答えられるようになった。その企業はマッシュホールディングス(MHD)だ。1998年創業だが2016年8月決算では売上高580億円、17年8月決算では年商700億円に届こうかという勢いである。

あまりファッションに詳しくない読者でも、ストリート・フォーマルの『スナイデル』とか、ルームウェア旋風を巻き起こした『ジェラート ピケ』などのブランドは御存知かもしれない。この2ブランドはMHDのファッション部門を担っているマッシュスタイルラボが世に出るきっかけになった2枚看板である。

ファッション業界のここ10年の新興勢力では、ギャル御三家と言われるジャパンイマジネーション(『セシルマクビー』ブランドが大黒柱)、マークスタイラー、昨年11月に上場を果たしたバロックジャパンリミテッドが著名だが、MHDはこの3社とも一線を画していて、全くニュータイプのファッション企業だと思う。同社の近藤広幸・社長(41歳)は、「MHDは、ファッション事業、ビューティー事業、フード事業、デザイン事業、EC事業を擁する総合クリエイティブカンパニー」だと定義している。こうした感覚は新しい。そもそも、創業者の近藤氏自身がファッション業界出身者ではなく、インテリアデザインやCGのビジネスをしていた。今でも、MHDには、ちょっとアマチュアリズムというか趣味的な余裕があって、それが何とも言えない魅力になって、商品やプロジェクトに反映している。

マッシュホールディングスの近藤広幸・社長とジョエル・ロブション。『ジェラート ピケ』ブランドとロブションはコラボしている/Photo:Shuhei Shine(WWD JAPAN.com6月29日より)

『スナイデル』や『ジェラート ピケ』のコンセプトやデザインの新しさはすぐにわかったが、私はそのブランド名になんか聞き覚えがあると、ふと考えこんでしまったのだ。スナイデルってもしかして、オランダを代表するサッカー選手ヴェスレイ・スナイデルからとって来た名前じゃないのか?では『ジェラート ピケ』は、イングランドを代表するフットボーラーのスティーブン・ジェラードとスペインの名サッカー選手ジェラール・ピケの合成ではないのか?商品企画にかなり入れ込んでいるという近藤社長がサッカー好きなのかどうかは聞き忘れたが、少なくとも企画チームにサッカー好きがいることは間違いないようである。ついでに言うと2014年にスタートしたブランド『ミラ オーウェン』も、往年のカメルーンの代表選手のロジェ・ミラ(1990年のサッカーワールドカップイタリア大会で4ゴールを挙げてアフリカ勢として初の準々決勝に進出する原動力になり「不屈のライオン」の異名をとった)とイングランド元代表フォワードで、1998年フランスワールドカップで大活躍したマイケル・オーウェンの合成語ではないのかと思えてくる。いずれも、ウィメンズのブランドであるから、このブランド名に隠された一種のウィットに気付く女子はいそうもないのだが、この「謎解き」ができると、このMHDという一種のライフスタイルデザイン企業がなかなか一筋縄ではいかない存在であるのにニヤリとさせられる。前述したアマチュアリズムや趣味的な余裕とはこんな具合に現れる。

3月1日、MHDのフード事業を担うマッシュフード社は、レストラン『AZUR et MASA UEKI(アズール エ マサウエキ)』を西麻布にオープンした。カリフォルニアのワイナリーであるアズール・ワインズ(AZUR WINES)と注目のフレンチシェフ植木将仁がタッグを組んだ本格派フレンチレストランである。

3月1日オープンした西麻布のAZUR et MASA UEKI の内観/Photo:マッシュホールディングス
AZUR et MASA UEKI の植木将仁シェフ/Photo:マッシュホールディングス

最高級カリフォルニア・ワインと鬼才シェフの料理のペアリングが楽しめる店というわけである。私も試食させてもらったが、なかなかのレベルだった。フードでもしたたかなMHDの展開力を感じ、改めてMHDはグルメなクリエイティブ集団だと再認識した。

甘美なる憂愁と題された植木将仁シェフのスペシャリテ。フォアグラのコンフィ、天然車海老、ショコラシャンティのコンビネーションが天才的/Photo:マッシュホールディングス

近藤社長は、単なるライフスタイルクリエイト企業のオーナー社長ではない。クリエイティブ・ディレクターであることを忘れてはならない。このレストランも近藤社長がカリフォルニアと日本という2つの要素を自らマリアージュしたものであろう。こんな具合に少なくとも近藤社長が情熱を傾けて事業にとり組んでいる限りは、MHDにはまだまだ成長余力がありそうだ。

Photo:Shuhei Shine (WWD JAPAN.com6月29日)、マッシュホールディングス