ローファーとポロシャツでクールビズのドレスアップを考える!?

メンズシューズのトレンドはローファーに/Photo:Shuhei Toyama

モード逍遥#35

筆者が願望した通り(モード逍遥#7)、今夏のレザーシューズのトレンドは重厚なグッドイヤーウエルトのドレスシューズに代わって、軽快なローファーへ移行している。

大手セレクトショップが推しているのは、アメリカンタイプのコインローファーだ。流行の火元は、ピッティで活躍し始めた若いデザイナーやバイヤーの着こなしにあったらしい。彼らは、こうした靴を1960年代のニューヨーカーのように、コットンスーツにコーディネートすることが「クールだ!」と考えているのである。

たしかにセバゴのビーフロール・ローファーやバスのウィージャンはスタイルのある定番靴だと思うが、筆者のような年配者がはくと、どうも“トラッドの先輩”風をふかせているようで居心地が悪い。また正直な話、厚手の甲革は少々カルシウムが足りなくなってきた足の骨にひびくのである。
で、もっと中高年に優しいローファーがないかと探したところ、「コレ偏屈じじい、じゃなかった、遠山さんにピッタリでしょう」と、教えてくれたのがマルモラーダなどの上質なイタリア靴を手がけるウィリーの秋山淳一郎さん。

推してくれた黒いギン付きスウェード製フラテッリ・ジャコメッティのタッセルスリップオンは、モカシンよりもひと手間贅沢なハンド・ボロネーゼという製法を取り入れている。そのため靴底の返りが半端なく凄い。靴底のもっとも屈曲が必要な、つま先から約7センチほどにあたる部分が90度以上楽に曲がるのである。

フラテッリ・ジャコメッティのタッセルスリップオン/Photo:Shuhei Toyama

しかし、この靴を通常のように靴べらで履こうとすると違和感を感じた。アッパーのベロ部分が普通のローファーより深くとってあるために、足入れのときに甲がその部分に引っ掛かる感じがするのである。

何じゃコリャ、という顔をすると、すかさず秋山さんが、「足を包み込むようにフィットさせるために、わざとベロのポイントを高めに設定してあるのです。履くときの要領はエスパドリーユと同じ。そのためにかかとの月芯を取ってあります」と、絶妙のフォロー。

まずかかとをつぶして足先を入れ、次につぶしたかかとへ指を入れて持ち上げれば、靴べらなしでスムースにはける。

かかとをつぶして足先をイン/Photo:Shuhei Toyama
ゆびをかかとに入れるだけでスムースに履ける/Photo:Shuhei Toyama

イタリア高級靴固有の上質でソフトな革使いは、足へのストレスをまったく感じさせないほど快適である。

この春先は、着丈が長くウエストをシェープしたテーラード・ブレザーを裾幅がややフレアー気味になったトラウザーズに合わせてみようと考えていた筆者にとっては、このスマートなラストは言うことなし。

改めて、無理して若ぶった流行など意識せず、大人は大人の感覚で上質で優れたものを選ぶべきだと、思った次第だ。

またこの靴をクールビズに使用することもできる。コーディネートは黒や白などの無地ニットポロシャツ、チャコールグレーのサマーウールのトラウザーズ。そして靴の素材は、スウェードでなく黒いスムースカーフレザーに代える。

ちょうど参考になりそうなコーディネートをバーニーズ・ニューヨークの春夏展示会で撮影しておいた。ただし写真は、このコラムを思いつく前に撮影したものなので、靴がリザード製になってしまっている。ご容赦を願いたい。

バーニーズニューヨーク展示会/Photo:Shuhei Toyama

細かい点だが、クールビズに使用するポロシャツは、これまで鹿の子編みのものばかりだった。しかし筆者は昔から、ポロシャツにもドレス度の高低が必要だと考えていたのである。

たとえばエグゼクティブが重要な会議のときに、勝負服ともいえる上等なスーツで臨むように、ここ一番のビジネスのときは、細番手のコットン製で肩をへらし編みにした上質なニットポロシャツを着用したらいかがであろうか。

こうしたポロシャツの洗濯は家庭用洗濯機では不可能。ケアは、ドレスシャツのように手洗いかドライクリーニング。こんな手間がいるところにも、特別感があるはず。

現在の高級ニットポロシャツは、ジョン・スメドレータイプのものばかりだが、筆者がほんとうに望むのは、衿をしっかり編みこんで、できれば低い台衿が付ついたドレスニットポロシャツなのだ。もちろん現在の市場に存在するものではない。

クールビズの産みの親である都知事あたりが、ポロシャツのニュードレスアップコードを提案してくれないものだろうか。

Photo:Shuhei Toyama