日本酒輸出増加の背景に流通の変化あり!?

Photo:motoko / PIXTA(ピクスタ)

佐渡からの日本酒通信#21

平成28年の日本酒輸出についての数字が発表になりました。輸出量が1万9,737㎘(前年比109%)、輸出額が約156億円(前年比111%)と、依然好調が続きます。上位3カ国は数量でアメリカ、韓国、台湾の順。金額ではアメリカ、香港、韓国の順でそれぞれ総量の半分以上を占めています(貿易統計/農林水産省より)。上位国以外の国でも日本酒輸出は軒並み増えており、世界各国で日本酒マーケットが開花していることが伺えます。

和食人気の広がりと共に成長を続けてきている海外日本酒市場でありますが、その内容はここ10年で大きく変化したように思います。まず、日本酒のクラス。輸出量が前年比+9%に対し輸出額が+11%という点を見てわかるように、中身が高級化しています。そして、これら日本の高級酒需要を押し上げているのは、現地在住の海外ローカルの人が多い。海外在住日系人にとっての“故郷の味”から、国際酒としてのSAKEの時代へ。その背景には多くの要因が絡んでいるわけですが、今回は日本酒の味わいの多様化と流通の多様化に注目したいと思います。

例えば輸出最大国であるアメリカ。2000年以前に見かける多くは純米酒でありました。これはアメリカ本国の酒税の関係で、醸造アルコールが添加されない純米酒の酒税がアルコール添加酒と比較して安かったことが理由にあげられます。しかし近年のアメリカ市場を見てみれば状況は大きく進化しています。大吟醸、吟醸酒はもちろんのこと、発泡酒、にごり酒、生酒とそのバラエティは増すばかり。種類が増えれば、当然香りや味わいもバラエティが増えてきます。リンゴやメロン、バナナ、カカオの香り、あるいはクリーム、バターのようななめらかさにバラの如くの華やかさ・・・。本当に米から出来ているの?と疑うほどに百花繚乱のSAKEワールドです。

日本酒の多様性は合わせる食文化の多様性につながります。和食はもちろんのこと、イタリアン、フレンチ、中華、そしてアメリカ人が大好きなステーキにだって「よく合うこの一本」を提案出来る。ワインリストにSAKEがオンリストされることによって、そのマーケットの可能性はぐっと広がるというわけです。

そして、この動きに呼応するように多様化しているのが流通です。もともと日本酒の輸出入業務は日系の大手貿易会社が行うのが主流でありました。酒だけではなく米や味噌、醤油などを海外の和食屋さんや日本食材店などに届け、日系人の食生活を支えてきました。それが2000年代に入り、じわじわと海外ローカルの代理店が日本酒の輸入に関心を持ちはじめます。きっかけは日本に旅行した際に飲んだ地酒の美味しさ、なんてこともあるでしょう。ふと口にしたSAKEの味に惚れ込み、これを母国で広げるべく輸入に乗り出す。美味しさに国境はないのです。

流通スタイルについては、アメリカでは現地ワイン流通企業がラインナップにSAKEを数種類加えることが多く、アジアでは日本酒に特化してスタートする小規模の現地代理店が多いように感じます(もちろん、その逆もありますが)。ワイン流通企業の場合はすでに倉庫や物流ネットワークを持っているわけなので、温度管理が必要で重量のある日本酒を扱うには実際適しています。ワイン愛飲家に日本酒を知ってもらうという好機であることは、言うまでもございません。

このような現地ローカ代理店が増えることによって、前述した「和食以外のレストラン」にSAKEが流通する動きが促進されてまいります。外国の人が外国の人に日本のSAKEを売り込む。日本人が日本酒の美味しさを説くよりも、海外の人が日本の酒を語る方が説得力を持つこともあるでしょう。情熱は国境を越えていく。国際酒になるとは、もしかしたらそういうことなのかもしれません。

とは言え、実は日本酒の輸出量は国内生産量のまだわずか3%。一粒万倍の未来を描きつつ、ひたすら種を蒔くといたします。

Photo:motoko / PIXTA(ピクスタ)