メンズコレクションの最新傾向をチープシックに先取りする方法!?

モード逍遥#33

お屠蘇気分が抜け切らない1月の初旬に、次の秋冬モードに大きな影響を与えるメンズコレクション・サーキットはスタートする。

まずはロンドンを皮切りに、フィレンツェのピッティ、ミラノ・メンズコレとイタリア内での移動があり、続いてパリ・メンズコレ、そしてニューヨーク・コレクションまで、すべてを観ると約1カ月強の出張だ。

筆者も1990年代初頭から2000年代の前半までの約10年間、欧米の著名な仕立て屋を取材するかたわらコレクション見物もしていた。

そのため、海外コレクション詣でをしなくなった今も、開催シーズンになると気がソワソワして、つい専門紙などで報道される記事を読んでしまう。

最近はネット上にコレクション画像や動画が配信されるから、わざわざ海外へ行かなくてもコレクションの概要は把握できる。

そこで思いついたのは、こうした情報を現時点の自分のスタイルに生かすことは出来ないか、ということである。とくに今の季節は、セールの影響で売り場が荒れて面白いものが見つけにくいうえに、春物を着るには寒すぎる。ならば、来秋冬のトレンドを先取り体験するのも、一興だと考えた次第である。

ミラノ、パリ、ニューヨークのメンズコレクションを俯瞰し、筆者が気に入ったのは、プラダとヴァレンティノだった。どちらもコレクション自体の出来が良く、同時に筆者のスタイルに生かせそうなアイテムがあったからだ。

プラダは、英国のカントリールックと米国のウエスタンルックをミックスして、そこにセブンティーズとエイティーズの要素を加味したバナルなスタイル。気になったアイテムは、太畝コーデュロイのブーツカットパンツ、ハラコのウエスタンベルトなど。

いっぽうヴァレンティノは、テーラードジャケットにタイポグラフィーのワッペンを配したクルーネックを重ね、足元はスニーカーという、品の良いカレッジボーイスタイル。気になるアイテムは上質なウールのキャップ。これをタイドアップしたテーラードジャケットに合わせたのが、何とも新鮮だったし、普段ベースボールキャップを愛用している筆者には新しい発見だったのである。

そこで手持ちのワードローブの中から、コーデュロイパンツ、ハラコのアクセサリー、ウールのキャップをピックアップしてみることにした。この埋もれたアイテムの発掘作業は、昔購入して今ではすっかり忘れていたものが再発見できるから、なかなか楽しい。

プラダのコーデュロイパンツは太畝のうえにブーツカットで、これは筆者のスタイル上に反映しにくいもの。似合わないものを無理して着ても意味がないので、英国ブリスベン・モス社の中畝コーデュロイヘアレンジする。

ブリスベン・モスの中畝コーデュロイパンツ/Photo:Shuhei Toyama

同様にハラコのベルトも、コレクションでは幅4センチのウエスタンベルトを使用していたが、幅3センチのダブルリングベルトへ自分流にアレンジした。

ハラコのアクセサリーを探す作業中に、なんと昔購入したパトリック・コックスのハラコ・プレーントゥを発掘。このエイティーズ感あふれるアイテムはどこかで使えそうな予感がするので、靴箱の奥から、すぐ取り出せる場所へ移動しておく。

ハラコのダブルリングベルトとプレーントゥシューズ/Photo:Shuhei Toyama

ヴァレンティノのウールキャップを良く観察すると、ブリムが狭いように見えた。ブリムの長いベースボール型のキャップでなく、おそらくポロやクリケット競技、あるいはカレッジの制帽に使うクラシックなタイプのウールキャップをモチーフにしたのではないかと想像する。

ちょうど雰囲気がぴったりのものが、数年前にKIJIMA TAKAYUKIで購入していたので、さっそくご出陣願うことに。

帽子探索の過程で発見したのは、なんとアポロキャップ。かぶってみると意外にイケてるので、これもすぐに取り出せる場所へ移動。いつかどこかで使えそうな予感がする。

KIJIMA TAKAYUKIのキャップ(左)とアポロキャップ/Photo:Shuhei Toyama

最新コレクションの中から、自分のスタイルに似合うモノを先取りするコツは、こんな感じでご理解いただけたと思う。最後に隠し味として、ショウの最後に登場するデザイナーの着こなしにも着目しておこう。なにしろコレクションを創造した本人の普段着なのだから、参考にならないわけがない。

注目したのはミウチャ・プラダがステージ挨拶に登場したときに着ていた、ミディアムグレーのカシミアVネックとブルーのコットンシャツの組み合わせ。じつに普通だけれど、格好いい!

さて最新モードからヒントを得た筆者のコーディネートはこうだ。ブリスベン・モスのコーデュロイスーツ、ハラコのダブルリングベルト、ミディアムグレーのカシミアカーディガン、ブルーのコットンシャツ、グレーのウールキャップ。

最新メンズコレクションを先取りしたコーディネート/Photo:Shuhei Toyama

これまで筆者は、スーツにベースボール調のキャップはタブーだと敬遠していた。しかしこの着こなしならタイドアップまでも可能。最新モードの情報は、筆者のようなトラッド派にとっても自分のスタイルを進化させる触媒になり得るのである。

Photo:Shuhei Toyama