浅草にある、ヨーロッパへの扉 ~BAR DORAS(ドラス) Vol.1

BAR DORAS/Photo:Daisuke Uchida

バー・ドラスのオーナーバーテンダーの中森保貴さんがこの店をオープンしたのは2005年。毎年、年に1回、2週間程ヨーロッパを訪れるのを決まりとしている。生産者と顔を合わせ、現地の酒や食文化に触れ、骨董市に行ってグラスを探し出し、街並を歩いてその風土を肌で感じるという作業は、これからも必ず続けていくという。


■BAR DORASとは?

浅草駅から隅田公園沿いの道を歩いて7、8分。駅周辺のにぎわいからすっかり離れたところに位置する。ドラスとはゲール語で「扉」の意味。そんな店名をもつバーの扉を開けると、異空間が待ち受ける。最初に訪れた人はおそらくその“暗さ”に驚くかもしれない。抑制された調光と、キャンドルの光を頼りに席に着く。オペラが響く店内は、厳粛な気持ちにさえなってくる。しかし、決してそれは居心地の悪いものではない。暗さに目が慣れてくる頃、自分もその空間に溶け込んだような気がしてくるから不思議だ。行く前にこのブログを読んでおくと、さらにお酒がおいしく感じられるかも。http://doras.exblog.jp/


BAR DORASの中森保貴さん/Photo:Daisuke Uchida

—毎年ヨーロッパに行かれているんですよね。それはどんな理由からですか?

酒を扱い、その魅力を知るうちに、その作り手や土地についてもっと深く知りたいと思うようになったのです。実際に自分で足を運び、酒が生まれた土地文化や歴史を知れば知る程、魅了されました。

 

—ヨーロッパを旅した際の記録をまとめた著書『旅するバーテンダー』にもその辺の経緯が書いてありますね。そして、中森さんの旅のスタイルは、まさにその土地の風土や人々の暮らしに溶け込むようなスタイルで、紀行モノとしても大変面白く読みました。

本にも書きましたが、僕は実際に生産者のところに行って、話をして、作るところを見て、彼らと話して、酒を仕入れています。それぞれに生産者の思いやストーリーがあって、その土地の文化があります。

だからこそ、それらの1杯を一番美味しく飲むにはどうすればいいかを常に真剣に考えているのです。

Photo:Daisuke Uchida

 

—著書でも触れられていましたが、こちらのバーでは、コニャックに羊羹を合わせるとか?

はい。ウチの店で扱っているような『ギィ・ピナール』などのプロプリエテールのコニャックは味わいが繊細です。ハードリカーには水が当たり前のように出てきますが、そうした繊細な味わいのコニャックを、水を含んだ後に飲むと、口の中に水分が残っていて後口の余韻が苦みに変わってしまうんです。そこで、羊羹を食べると、羊羹が口の中をコーティングしてくれるんです。そうしてからコニャックを口に入れると味わいも余韻も増すんです。お酒の美味しさの“増幅装置”として作用するんですよね。

そのため、羊羹はコニャックが最大限に美味しくなるように、研究を重ねました。シャルトリューズを香り付け程度に使った自家製の羊羹です。

 

—たしかに、比べると全く違いますね。水は当然チェイサーとして飲むもので、後味はそういうものなのかと思っていましたが、この羊羹をいただくと、コニャックの香りも味わいももっと深く広がっていきます。

実際に試していただくと、皆さんそのように仰ってくださいます。

また、羊羹も合わせられますが、長期熟成のコニャックの旨味をより引っぱり出すためには自家製の生チョコレートを添えています。なので、その場合は自家製のチョコレートをお出ししています。こちらも、お酒のアテとか、ペアリングという意図ではなく。

 

Vol.2へ続く

Text:Miki Ozawa

Photo:Daisuke Uchida

■Barデータ

BAR DORAS(ドラス)
東京都台東区花川戸2-2-6
tel.03-3847-5661
営業時間 月〜土 19:00〜翌3:00
日・祝 18:00〜翌2:00
休 水曜・第3火曜