クリュッグ 2003がクリュッグ 2002より先に出荷された理由とは?

瓶内熟成させるクリュッグのセラー

シャンパーニュのクオリティを示すバロメーターのひとつに「瓶内熟成期間」がある。

瓶内熟成とは、ワインに気泡を与える二次発酵後、それに伴って生じた澱とともにワインを瓶の中で寝かせること。澱は自らの役目を終えた酵母であり、それがワインに複雑なフレーバーとボディを付与する。一般に高品質といわれるシャンパーニュほど、複雑で多面的なフレーバーが感じ取れるはずだ。

シャンパーニュは法律により、ノンヴィンテージで最低15ヶ月、ヴィンテージで3年以上の瓶内熟成が義務付けられている。とはいえ、資金的に余裕のないレコルタンは別として、昨今、大手メゾンではノンヴィンテージでさえ3年近い熟成期間を与えるのが当たり前。ヴィンテージならば5年以上の熟成が施されている。

だが、しかし……。

クリュッグ』では法定熟成期間も、大手メゾンの常識的な熟成期間もまったく意味をなさない。グランド・キュヴェで最低7年、ヴィンテージは10年以上という数字を聞けば、3年や5年といった数字などまるで霞んでしまう。クリュッグの奥行きの深さ、レイヤーの厚みの秘密がここにある。

最新の『クリュッグ ヴィンテージ』は2002年。その瓶内熟成期間はじつに13年にもおよぶ。じつはこの2002年は時系列上、次にリリースされるはずである2003年の2年後、ようやく市場にお目見えしたのだ。

クリュッグ ヴィンテージ 2002

それはなぜか?

理由は2002年と2003年という、ふたつの「年の個性」にある。2003年はシャンパーニュにとって難しい年だった。二度も大きな遅霜に見舞われたうえ、8月には記録的猛暑。そのため、過熟したブドウと未熟なブドウが混在し、8月22日という1822年以来もっとも早い日に収穫が始まり、10月上旬になって終わるという、前代未聞の年になった。

2003年は多くのメゾンがヴィンテージを断念したが、いくつかの野心的なメゾンがこれに挑戦。クリュッグもその数少ないメゾンのひとつだった。この事実からも、クリュッグにとってヴィンテージとは、単に優れた年に造られるシャンパーニュではないことが、はっきり伝わってくる。

クリュッグ ヴィンテージ 2003

夏の猛暑を反映し、ヴィンテージ2003年は果実味豊かで寛容な性格をもつ。その一方、2002年は穏やかで恵まれた年ゆえの厳格さがあり、ワインが調和を得るには、さらに長い澱との接触時間を必要とした。澱にはワインにまろやかさをもたらす効果もあるからだ。もし2002年が3年前にリリースされていたとしたら、激しい酸が舌先を襲っていたかもしれない。

じつのところ、クリュッグでヴィンテージのリリースが逆転した例は、2002年と2003年が初めてではない。88年と89年も前後が入れ替わった。これも厳格な88年と寛容な89年というコンビゆえに生じた特例である。

クリュッグのアッサンブラージュが決まったレシピのない、年ごとの新たな試みであるのと同様、熟成期間もまた機械的には定められない。こうしたひとつひとつのシュール・ムジュールな造りこそ、クリュッグの品質を支えているのである。

 
【連載記事一覧】
Vol.1<メゾンのもうひとつの柱、クリュッグ ヴィンテージ>
Vol.3<真のクリュッグ・ラヴァーは『コレクション』を嗜んでこそ>

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