
心のふきだし#54
休日出勤をしなければいけないとき、服装の定義を考えたことがあるだろうか?土日休みの会社でもどうしても急ぎで仕上げないといけない資料を作ったり、何かの準備をしたりと様々な理由で出勤することになるが、ふだん着で出かける人が多いのではないか。
会社員であれば、通常男性の場合、平日はスーツかジャケットにパンツというスタイルがほとんどだ。それが休日の場合はどうだろう。
会社に出るといっても、ほとんど誰も居ないオフィスで仕事をするわけだ。上司も居ないだろうし同僚とも顔を合わせない、と思うと「なんでも構わない」とばかりに、気を抜いたカジュアルな服装になりがちだ。しかも 世の中のカジュアル度と比例して、休日出勤のスタイルもますますカジュアル化しているように思われる。
会社側からは、平日の服装については一応の定義はするが、休日出勤の服装までとやかくいうことはない。だからみんなの中にきちんとした「定義」がないのかもしれない。
もちろんほとんど人がいないオフィスでスーツを着る必要はない。けれども例えば真夏にTシャツと短パンにビーチサンダルという格好はいかがなものだろうか。
数人しか出ていない、とはいえ上司が出勤することもある。あまりにもカジュアルな格好をしていると「常識のない人間」だと思われるかもしれない。
ではどういう格好をするとよいのか?オフィスで着ても通用するカジュアルな服、ということで「オフィスカジュアル」とか「ビジネスカジュアル」と言われるものがよいのだろう。ジャケットを着ないまでも襟の付いたシャツや、カジュアルでもポロシャツくらいに留める。パンツもスエットのものは履かない、といったところだろう。
ところがこれも難しく、下手をすると中高年がゴルフに行くようなおしゃれ要素の少ない格好になってしまう。色使いのせいなのか、世の中には今どきのおしゃれなゴルフウエアもあるのだが。
恐らく若者のほうはそんな服を「まったくイケテナイな」と思い、自信たっぷりにオシャレだけれどカジュアルすぎる服を会社に着て来るのだろう。けれども、実際はおしゃれかもしれないが、ビジネスカジュアルとして「Tシャツ、ダメージジーンズ、ニット帽」などはビジネスカジュアルとしてイケテナイのである。
休日と言っても、急に社外の人と会うことになっても対応出来る服装が望ましい。もちろん女性も同様だ。胸元が開きすぎた服や、ミニスカートも避ける。
休日も会社という場所なのだからふさわしくない服装は避けるのがマナーだ。
あるファッション雑誌の編集者から聞いた話がある。休日に雑誌のタイアップの仕事で有名タレントを使った撮影があった。そこには編集者、カメラマン、ヘアメイク、クライアント、広告会社の担当者などが集まった。
有名タレントということもあり、カメラマンや編集者もいつもより、きちんとした服装で撮影に臨んだと言う。いつもは着ないジャケットや革靴を履いて撮影に向かったのだそうだ。けれどもそこにいたある広告会社の担当だけが、オシャレなブランド物のパーカーにスエットのパンツという装いでとても浮いてしまっていた。タレントに失礼で編集側が恥ずかしかった、ということだった。
この撮影が平日であれば、きちんとスーツを着て立ち会いをしていただろうに、週末だからというだけで、カジュアルでOKだと思い込むのはとても道理に合わないことだ。服装がカジュアルすぎたために、仕事が出来るビジネスマンとして見られなくなってしまうことはとても残念だ。
こういうことこそ、先輩社員が意識して若い社員に見せていくことなのだろう。新入社員は初めての休日出勤日に何を着たらよいのかわからない。けれども先輩社員がとても気を抜いた服装をしていたら、これでいいんだ、とずっと思い込むことになる。新入社員としてルールを身につけていく最初の時期が肝心なのだ。なぜならビジネスマンとしてのマナーのひとつなのだから。
Illustration:Nao Sakamoto