石川の変態すし屋でブリ・テイスティング?!

野々市駅から車で10分。住宅街にひっそりと佇む『すし処 めくみ』/Photo:MUNEAKI MAEDA

レストラン熱中派#34

毎年恒例となっている『すし処 めくみ』詣でに行ってきた。8年前、初めて石川県『すし処 めくみ』に伺った時、私は取材しながら心の中で小躍りするほど興奮していた。「スゴイ、面白い、こんな人がいるんだ!」。その興奮は何度行っても変わらない。

3年前に改装して、素晴らしい檜のカウンターに。鮨を味わうために整えられた最高の環境/Photo:MUNEAKI MAEDA

店主の山口尚亨さんは石川県山中温泉生まれ。東京の寿司屋で9年修業後、地元に戻った。金沢で店を構えるつもりだったが、予算の都合により隣町の野々市へ。当初、魚は近江町市場で仕入れる予定でいたが、意にかなう魚は金沢の老舗有名店か、築地に行ってしまい、新参者には回ってこないことがわかった。そこで山口さんは毎朝、能登半島の漁港を目指して車を走らせることを始めた。市場に揚がる前に魚を見て、上物を先に抑えてしまおうという魂胆だった。

ところがここでも相手にされない。それでも往復200キロ、毎日通って、ようやく半年ぐらいたって、漁師や仲買いの人たちから口をきいてもらえるようになった。とにかくその日揚がった最高のものをどんな高値でも買う。能登半島のどこに何が揚がったかを把握して同時に築地からも必要なものを仕入れる。そんな冒険的試みがあるから『めくみ』にはその日、最高の日本の海の恵みが揃う。もちろん銀座や西麻布の高級寿司屋より、時間も交通費もかかるが、それでも私は『めくみ』の寿司が食べたくなる。生の大きな鳥貝が楽しめる春(最近はめっきり少なくなり、幻になりつつある)と、越前ガニやブリが楽しめる冬に通う、年に2回の贅沢だ。