クリュッグ×ベルルッティのコラボレーションバッグは卓越したメゾンのセンスが触発して生まれた傑作だ

筆者の敬愛するエッセイストにしてウェルドレッサー、しかもグルメとして知られた故古波蔵保好さんは、「煙のように消えてなくなるものにこそ金を遣え」と教えてくれた。

投資のために高性能のスポーツカーを保有したり、不動産を購入する方は多い。こうしたものに比べて、良い音楽を聞いたり、優れた舞台を観たり、見事な料理や素晴らしいシャンパーニュを堪能したり、といった煙のようになくなるものには、財布の紐をしめる傾向が少なくないようだ。

しかし、と古波蔵保好さんは説くのである。「魅力ある男に接して感じるのは、彼らのほとんどが、消えてなくなるものに金を使った形跡があることだ。彼らが、自分を社会で生かすために情熱をもって仕事にあたり、稼いだ金を、自分も、そしてまわりの心も楽しませる遣い方をすると、いつしか豊かでスマートに生きる男になっていくものだ……」

先年、稼いだ金の遣い方に男の面目を見せて、よく遊び、周囲を楽しませ、いつしか「あんな大人になりたい」と慕われた業界の大先輩が、久しぶりにファッションショウを開き、カムバックを果たした。その打ち上げで小規模なパーティーが催され、ふるまわれたのが『クリュッグ グランド・キュヴェ』だったのである。

クリュッグ グランド・キュヴェ
無論、筆者にはシャンパーニュについて語る実力も知識も持ち合わせていない。ただ、約20年ほど業界のパーティーに招かれた経験から推し量ると、大規模なパーティーでは名の知れたブランドで、味も誰にも好まれるシャンパーニュが供されることが多かった気がする。また刺激的なイベントが余興として催される派手なパーティーでは、味もその刺激に負けないパンチの効いたシャンパーニュが選ばれたりしていた。

しかしその魅力にあふれる先輩が選んだのは、日頃から自分が愛飲し、親しい仲間にも飲ませてやりたいと思った、当時ではまだあまり知られていなかったクリュッグ グランド・キュヴェだった。だからこそ、「○×センセイのファッションショウも良かったけど、打ち上げもさすがだったね」と評判になったのである。

以前、その重鎮デザイナー氏にインタビューしたとき「ほんとうに優れた製品は、観た瞬間に映画の場面のようにストーリーが浮かびあがってくるものだ」と、おっしゃっていた。
長らくそんなファッション・アイテムにはお目にかからなかったものだが、ベルルッティがクリュッグのために作ったバッグ、『ショートジャーニー』を手に取った瞬間に、その現象が筆者の脳裏に映像として結ばれたのである。

クリュッグとベルルッティがコラボレーションしたブリーフケース『ショートジャーニー』
クリュッグメゾンは1843年、ヨーゼフ・クリュッグによって創設された。ヨーゼフは、シャンパーニュ業界の成功者の地位を確立していたにも関わらず、妥協を許さない哲学と信念によって独立。これまで正統とされてきたシャンパーニュの製法をブレークスルーしたクリュッグを生み出したのである。

シャンパーニュの原料となるブドウは、天候だけでなく、土壌や地形などにも左右され、わずか1メートル土地が違うだけでも味が微妙に変化するという。そうしたブドウを、プロの舌をもつ醸造スタッフらが約5,000回ものテースティングを繰り返し、卓越した最高の品質をもつクリュッグを製造しているのである。

いっぽうベルルッティは、ラストから導きだされた靴のフォルムに対する深い理解、パティーヌという染色技術、カリグラフィやタトゥーといった斬新なデザインなどで、外観だけではどこのブランドか区別がつきにくかった定番デザイン主流のクラシックな靴業界に革命を起こした。
いわばこのショートジャーニーは、洗練された異端、とも形容できるメゾン同士のコラボだからこそ生みだし得たマスターピースなのである。

ベルルッティのクラフトマンたちがインスパイアーされたのは、ヨーゼフがシャンパーニュ製造のための創意工夫を書き留め、その後6世代にわたりクリュッグ家に保管されてきたダークチェリーの革の手帳だった。彼らはこの使いこまれた革のダークチェリーを伝家の宝刀のパティーヌを使って、ダークチェリーカラーパティーヌという新たな色に創造し、クリュッグのシグネチャーとして捧げたわけである。

このバッグのデザインは、ベルルッティのバッグを代表し、またその軽さと使いやすさなどによって多くのエグゼクティブから評価されてきた、定番のブリーフケース・アンジュールにインスピレーションを得て作られたもの。

ショートジャーニーは、高さ37×幅42×厚さ19センチと、やや厚みを増したミディアムサイズである。この内部には、取り外し可能な3つのコンパートメントが備わっており、嬉しいことに、バッグにはクリュッグ グランド・キュヴェ1本と専用ポーチに入ったヨーゼフグラス2脚がセットされている。

ヨーゼフグラスとは、芳醇な味のクリュッグをより楽しむために、カップの形に特別な工夫を施したクリュッグの専用グラスのこと。このグラスをあえて2脚にしたのは、「シャンパーニュとは歓びの酒であり、共有できるもの」という創業者ヨーゼフ・クリュッグの信念に基づくものだという。
さて、筆者がこのバッグから思い描いた映像はこうだ。

深夜、飛行場にプライベートジェット機が着陸する。タラップが下がり、コート姿のビジネスマンが手にもつダークチェリーカラーのバッグがサーチライトで一瞬照らされる。男は忘れ物がないかを確認するためにバッグのジッパーを開く。すると中から、クリュッグのボトルの先端がのぞく。おそらく彼は、愛する人との記念日を祝うために、忙しい仕事の合間にクリュッグを調達したのだろう。月あかりが反射した道をパティーヌのドレスシューズが、あたかも男の気持ちを表現するようにスキップを踏んでいく。

ちなみに、ロングジャーニーと呼ばれるラージサイズのバッグは、高さ37×幅51×厚さ26センチ。こちらは取り外し可能な6つのコンパートメントにクリュッグ グランド・キュヴェ1本、クリュッグ  ロゼ1本、ヨーゼフグラス4脚がセットになる。つまり、家族や親しい仲間と歓びを分かち合う大きさを備えているわけだ。

手前:ショートジャーニー(高さ37×幅42×厚さ19cm/58万円、奥:ロングジャーニー(高さ37×幅51×厚さ26/71万円)。共にボトル、グラス用コンパートメントが付く
これらのバッグは、専用のコンパートメントを取り外せば、トラベルバッグとしても使用できる。シリアルナンバー入りはそれぞれわずか100個の限定品だ。

Berluti Pour Krugのバッグは、これから100の、否、無数の歓びのシーンを演出することであろう。

 

Vol.1 <クリュッグを嗜むドレスシューズ>


他にはない味わいを夢見た初代の考えを貫き、1843年の創業以来6世代にわたり伝統の製法を忠実に守り続けるクリュッグ家。
芸術にも喩えられるアッサンブラージュと6年以上の長く静かな熟成を経て、独特の深く複雑な味わいが生まれます。

お酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。お酒は楽しく適量で。