波佐見の陶磁器は、“新しいトラッド”である!?

アートうたかたの記 #11

縁あって、長崎の陶磁器の産地、波佐見町を訪れた。

当地の歴史と現況については、デザイン評論家の藤崎圭一郎氏がByronのコラムで的確に書き記しているので参考にしてほしい。


いま日本でもっとも勢いのある陶磁器産地は、長崎の波佐見だ – デザインのミカタ #2


藤崎氏は波佐見を「いま日本でももっとも勢いのある陶磁器の産地」と書いているが、実際行ってみて、その意味の深さがわかった。

波佐見では、いわゆる「焼きもの」の里に生息しているような、ひげをたくわえた陶芸作家とその徒弟制の工房に出会うことはほとんどない。

東京からきた取材のクルーに、作務衣を着た先生がみずから山菜を採り、天ぷらにして自作の器で豪快に振る舞ってくれたりはしない(筆者は過去に全国の陶芸作家の工房をめぐる本の編集に関わり、どこへ行ってもほぼ上記のもてなしを受けた)。

波佐見の歴史は16世紀に朝鮮の陶工が窯を開いて以来400年。かつては高嶺の花であった白磁の日本有数の産地だ。

西の原の瀟洒なカフェとギャラリー群 Photo:Chie Sumiyoshi
西の原の瀟洒なカフェとギャラリー群
Photo:Chie Sumiyoshi

江戸時代から波佐見は庶民の日用雑器を大量生産してきた。

大阪では「くらわんか」と呼ばれ、飯茶碗はほぼ使い捨てで、いまでも淀川の川底には商人たちが捨てた器が堆積しているという。

一真窯の手彫り柄のカップ・シリーズ
Photo:Chie Sumiyoshi