
ワイン縦横無尽 #30
以前、3回連続のクリュッグ・ストーリーでも述べたとおり、シャンパーニュはアッサンブラージュ=ブレンドの芸術。組み合わされる個々の畑や品種は所詮パーツに過ぎない。
ところが稀に、単一畑の単一品種から、「これは!」と思わず唸ってしまう、強い個性を備えた逸品が生まれることもある。デュヴァル・ルロワのプレシャス・パーセル・コレクションがまさにこれだ。
デュヴァル・ルロワは日本ではまだ馴染みの薄いブランドだが、シャルル・ド・ゴール空港のエールフランス・ラウンジでもたびたび目にするグランメゾンの一角。ヨーロッパでの知名度はすこぶる高く、ヨーロッパ若手ソムリエコンクールの冠スポンサーを務め、ルレ・エ・シャトーともパートナーシップを結んでいる。
もっとも、デュヴァル・ルロワが今日のような地位を築いたのはごく最近。シャンパーニュではしばしばヴーヴ(未亡人)が活躍するが、デュヴァル・ルロワもそのよい例である。

91年に先代のジャン・シャルル・デュヴァル・ルロワが他界し、その後、経営を引き継いだのが夫人のキャロル。8歳を頭に3人の幼い子供を抱えながら孤軍奮闘。持ち前のビジネス手腕を発揮し、ヴェルテュ村の中小企業に過ぎなかった同社を、トップ20に入るグランメゾンに大躍進させた。
そのマダム・キャロル・デュヴァル・ルロワが昨年末に来日。恵比寿のシャトーレストラン、ジョエル・ロブションにファンを集め、プレシャス・パーセル・コレクションの本邦初公開を行った。