ファッション好きにはたまらない!? 日本服飾文化振興財団のニッチな活動が面白い

モード逍遥 #30

ユナイテッドアローズの展示会を見に日本生命赤坂ビルヘ行ったら、同ビルの8階に公益財団法人・日本服飾文化振興財団の看板が出ていた。部屋をのぞいて見ると、何やら面白そうな服飾関係の資料がたくさん置いてあるではないか。俄然興味が沸いてきて取材をすることにした。

Photo:Shuhei Toyama

日本服飾文化振興財団は、ユナイテッドアローズの創業者である重松理さんが「お世話になったファッション業界に恩返しをしたい」という思いから、業界人だけでなく、これからファッションを目指す次世代の人材育成を目的として2014年に設立したものだという。

現在まで、優れた業界人を招きファッションの講演会や服飾デザイナー養成セミナーなどを開催している。

こうした活動を我々マスコミ関係者が知ることなったのは、2016年1月に原宿で開催されたイヴ・サンローラン・リブゴーシュのヴィンテージ服を使ったファッションショウであった。

ショウに使用された服は、小林麻美さんが財団に寄付した約180着の個人コレクションの一部だという。

Photo:Toyama Shuhei

ご存じのように、イヴ・サンローランはクリスチャン・ディオールの後を継ぎオートクチュール・メゾンの主任デザイナーになるが、わずかの期間で解任。

その後に自らの名を冠したメゾンを立ち上げ、さらに変革の時代の風に乗ってプレタポルテ分野へ参入。大成功を収めるのである。

そのブランドの名がリブゴーシュ(左岸)。つまり、旧来の一流メゾンが店をもつセーヌ川の右岸でなく、あえて学生や芸術家が暮らす左岸に新しいプレタの店を開き、先進性を示したわけである。

時は1960年代後半から70年代初頭。公民権運動やベトナム戦争反対デモが連日のように起き、ヒッピーやユニセックスルック、そしてドラッグ・カルチャーが台頭した時代。

そうした騒然とした世の中に対して、若き才人サンローランは、ミリタリールックやデニムといったストリートの流れを逸速くコレクションに取り入れただけでなく、オートクチュールの技術を生かした優れた既製服のデザインを次々に発表し、当時のお洒落な人々から圧倒的な支持を受けたのである。

昨年1月のファッションショウ、そして12月に銀座のポーラビルで開催されたトルソーと映像による展覧会は、ともに全盛期のリブゴーシュを示す貴重な服と現代のクロージングをコーディネートさせたもので、現在流行中の古着ミックスとも呼応した素敵なイヴェントになっていた。

同時に、カーキのコットンギャバジンや濃紺のサージといったマニッシュな素材にさりげなくエレガントさを加味したり、逆に黒のベルベットといったフェミニンな素材を絶妙なカットで美しいテーラードジャケットに仕上げるといった、サンローランならではのシックな表現を、手で触れるほどの近さで見られるという幸福も味わえたのである。

重松理さんが日本服飾文化振興財団を立ち上げるきっかけは、セルマーという主に海外企業と技術提携を続けてきたテキスタイルメーカーのオーナー氏から、長年会社で集めてきた貴重なファッションの資料を託されたことだったという。

その資料は、19世紀のテキスタイルの分厚い見本帳やリバティプリントのデザイナーとしても知られるバーナード・ネーヴィルなどが作ったテキスタイルパネル。

Photo:Shuhei Toyama

さらにファッション関係の書籍や写真集も豊富で、たとえばアメリカンヴォーグ(1914年~)やエスクワィアー(1933年~)などのバックナンバー。面白いところでは日本の雑誌の創刊号ばかりを集めたコーナーも展開されている。

ちなみに公益財団法人による公的な事業や文化の振興などのための活動は、すべて寄付によって成り立っているものらしい。