つまり、レストランは男と女の劇場である!?

オープン直後から、そのスタイリッシュな店内はお客を魅了したが、実は料理に関して、岡田氏の悩みは尽きなかったという。

「中国の料理人にとって、伝統的な料理はお手の物ですが、少しひねったものは受け入れません。フランス料理的な仕上げに拒否反応を示すんです。確かに彼らにとってはまったく馴染みのない料理ですから、時間をかけて取り入れてくれればいいと思ったんですが」。

オープン当時は、中国の伝統料理はもちろん、日本にまだ紹介されていない珍しい料理も積極的に取り入れた。

そして2015年、岡田氏にとって長年の想いであったフレンチとチャイニーズを組み合わせた料理はフレンチの料理人を料理長に迎い入れ、ようやく実現する。コンセプトは“分解と再構築”によるフレンチの料理人が考案する中華料理。

「誰もが知っている中国料理を分解して再構築する。これによって、メインの素材が持つ本来の味をより際立たせられます」。

かに玉、フカヒレの姿煮、エビチリなど、おなじみの料理がすっかり姿を変えて登場した。
また、“チョコレートと豆鼓のテリーヌ”“レアに焼いたマグロ 胡瓜 クラゲのタルタル”などは、今までの中国料理では考えられなかった斬新なひと皿として登場。

とはいえ、あまりにも馴染みのない料理だと、今度はゲストが戸惑ってしまう。

「伝統的な中国料理、日本の旬の素材を取り入れたナチュラルな料理、そしてここでなければ味わえない斬新な料理。選ぶのはお客様ですから、自由に楽しんで頂ければ」。

現在のメニューは、35年の足跡の集大成となっている。

“タラバ蟹のソテー、スクランブルエッグかけ(金のかに玉)”
おなじみの“カニ玉タラバ蟹と卵に分解し、それぞれ別の調理法で仕上げて、口の中で再びカニ玉の味に着地する!
Photo:ダイニズテーブル
“レアに焼いたマグロ 胡瓜 クラゲのタルタル シェリーヴィネガーに漬けた卵黄と共に”
前菜3種盛り(クラゲの和え物、ピータン、胡瓜の甘酢漬け)の分解、再構築。見た目の斬新さが、口の中で“この味は!”と判明するところが面白い。
Photo:ダイニズテーブル

最後に、長年“夜遊び文化”を牽引してきた岡田氏から見て、現在の日本のレストランはどんな印象なのか、また、レストランとは何かを聞いてみた。

「日本の若いシェフは、すばらしい料理を出しますよね。日本のレストランのレベルは非常に高いと思います。でも、レストランは料理だけで語られるものではないと思うんです。レストランとは、基本的に男と女がひとつのユニットになり、そのユニットが集まって成り立つ社交の場です」。

つまり、男性は女性をエスコートし、いかに女性を楽しませられるか。レストランという空間ではスタッフ、料理、お酒などをうまく自分の味方につけて楽しむ。それが大人の男の粋な振る舞いだ。

「そういった粋な方は少なくなりましたね」と岡田氏。自ら先頭を走り、その舞台を作り、御膳立て(まさに言葉どおり!)をしてくれたリーダーだからこそ、その精神を受け継ぐ男性の姿がなかなかみられないことに歯がゆさを感じるのだろう。

同じことを私も感じることがある。“レストランは男と女の劇場である”。この名言(私が勝手に作ったのだけど)を忘れてはいけない。

予約の取れない店のカウンターを貸し切って、得意げな人たちの即席仲良しディナーなんてロマンスのかけらもない。

『ダイニズテーブル』の空間に浸ってみればわかる。最初は暗いと感じる照明のおかげで、相手をじっとみつめることになり、さらにはちょっと身を乗り出して声を聞くことになる。息遣いや体温まで感じられる……。

これこそ『ダイニズテーブル』のサービススタンスなのだ。男にとっての“切り札になる店”であることはもちろん、女にとっても“切られたい店”だと思う。

現在70歳の岡田氏、一貫してダブルのスーツを着こなす。
身だしなみに気を遣うのはもちろんのこと、話し方にもゆったりとした独特の魅力があふれている。「幸いにも健康ですし、75歳までは今の店をやっていこうと思っています」。
Photo:ダイニズテーブル

 

Photo:ダイニズテーブル