醸す力に感謝しつつ、酉年に向け日本酒で乾杯!

Photo:Yoshiyuki Ito

佐渡からの日本酒通信 #19

2016年も残すところあと僅かとなりました。忘年会続きで疲れた胃袋と肝臓をいたわりながら、今年一年を振り返っている方も多いことでしょう。

そんな一年の世相を漢字一文字で表す、師走恒例の「今年の漢字」が先日発表されました。2016年を表す漢字は「金」。リオ五輪の金メダルラッシュや、イチロー選手の通算3000本安打達成の金字塔、政治とお金、トランプタワーのゴールド一色のペントハウスなど、確かに「金」が印象に残る一年でした。たったひとつの文字で具体的なイメージや強いメッセージを表現し、一年の出来事を総括してしまう。今更ながら文字の力を感じずにはいられません。

人は誰しも好きな漢字の一つや二つあるものですが、筆者の好きな漢字は「醸」であります。弊社の社訓「幸醸心」にもこの文字が入っているほど。

「醸」とは、言わずもがな酒を造るという意味で使われる「醸す」です。この「醸す」の語源としては、酒造りの始まりである口噛み酒の「噛(か)む」から派生したものという説がよく言われます。

しかしながら別の説では、「醸す」は「かびす」から転じたものだというものもあり。酒造りの要となる麹米の表面にぎっしりとカビが生えている様子を思い浮かべると、なるほどこちらの説の信憑性もかなり高いように感じます。

どうもカビから転じたらしい「醸」という文字に、なぜこんなにも魅かれてしまうのか?

それは「醸す」働きがすなわち、今あるものから違うものを生み出す力であるからです。白く精米された米を麹と酵母の力で人を酔わせるアルコールに変化させる。しかもカビの力を借りるというのに、生み出すものは花や果物の香りを放つ美味なる飲み物です。モノにはカビが生えて腐敗するものと上手に発酵するものがあるわけですが、醸す力が加わることで身体に良かったり、自然に優しかったり、心に響くものを創り出す。こんな魔法使いの如く神秘的なパワーに溢れた「醸」のように生きたいと夢見てしまうのです。

ところで、この「醸」の篇である「酉」の由来は酒を入れる壺。また「酉」は収穫した作物から酒を造るという意味があり、転じて「実り」を表し、とても縁起のいい言葉としても知られています。

2017年はその「酉」の年。「朱鷺」の舞う島で「鶴」が付く銘柄の酒を醸す筆者の蔵にとっても、特別な年になりそうです。

今年も残すところあと僅かとなりました。

仕込み蔵は年末年始も稼働しています。酒を醸す営みに休みというものはありません。我々が寝ている間もひたすらに美味しいお酒を醸すことにエネルギーを注いでいるのです。新しい年はしぼりたての新酒で迎えたいものです。

来たる2017年が皆さまにとって幸多きことを願います。

そして酉年も、「日本酒で乾杯!」

 

Photo:Yoshiyuki Ito