「クリュッグ グランド・キュヴェ」のすべてを暴く!?

12の異なるヴィンテージからなる131種類のワインがアッサンブラージュされ、もっとも古いワインは2000年。リザーヴワインの比率は42パーセント。品種構成はシャルドネが36パーセント、ピノ・ノワールが45パーセント、ムニエが18パーセント。

決まったレシピをもたないクリュッグにとって、これは2016年の春に瓶詰めされた、2015年収穫のワインをベースとする『クリュッグ グランド・キュヴェ』のありのままの姿だ。

Clos du Mesnil(クロ・デュ・メニル) クリュッグがル・メニル・シュール・オジェのど真ん中に所有する、石垣に囲まれた1.84haの単一畑。もともとグランド・キュヴェの1コンポーネントとして手に入れた畑だが、単独で詰めたところ素晴らしいブラン・ド・ブラン(白ブドウのみから造られるシャンパーニュ)に仕上がったため、79年ヴィンテージからラインナップに加わった。多くの年にもっとも早く収穫される。 Photo:Tadayuki Yanagi
Clos du Mesnil(クロ・デュ・メニル)
クリュッグがル・メニル・シュール・オジェのど真ん中に所有する、石垣に囲まれた1.84haの単一畑。もともとグランド・キュヴェの1コンポーネントとして手に入れた畑だが、単独で詰めたところ素晴らしいブラン・ド・ブラン(白ブドウのみから造られるシャンパーニュ)に仕上がったため、79年ヴィンテージからラインナップに加わった。多くの年にもっとも早く収穫される。
リザーヴワイン、すなわち過去の取り置きワインが40パーセントを超え、そればかりか11もの異なるヴィンテージで構成されている。ベースとなる2015年と合わせて12ヴィンテージ。これこそクリュッグ グランド・キュヴェをしてノンヴィンテージと称さず、クリュッグ・ラヴァーから敬意を込めて“マルチカラーシャンパーニュ”と呼ばれる理由である。

この最新の数字は今年のジャーナリスト向けイベントに参加して得た情報だが、今では市場で流通するすべてのクリュッグにおいて、簡単にその詳細を知ることができる。その方法が『KRUG iD』だ。バックラベルにある6桁の数字をクリュッグアプリで読み取るか、クリュッグのウェブサイトに打ち込むだけで、誰もがそれぞれのボトルのストーリーを垣間見ることができる仕組みになっている。

いつ澱抜きされたのか。最も古いワインは何年で、若いワインは何年なのか。何種類のワインがアッサンブラージュされ、それは何ヴィンテージにわたるのか……。

我が家のセラーにある最新のクリュッグ グランド・キュヴェのiDを調べたところ、澱抜きが2015年の冬で、最も古いワインは1990年、最も若いワインは2007年。12の異なるヴィンテージからなる183種類のワインがアッサンブラージュされていることがわかった。すると瓶詰めは2008年の春で、澱抜きが2015年の冬だから、7年半もの間、澱とともに瓶内熟成していたことになる。

「そんなことはどうでも結構!」と思われるかもしれないが、シャンパーニュ好き、なかんずくクリュッグ・ラヴァーにとってきわめて重要な情報。とりわけヴィンテージ表記のないクリュッグ グランド・キュヴェの場合、澱抜きの日付はクリュッグをさらに楽しむうえで欠かせない。

クリュッグ グランド・キュヴェ
というのも、昔からワインの教科書では、澱抜き後のシャンパーニュはただ劣化が進むだけとまことしやかに言い伝えられてきたが、クリュッグ グランド・キュヴェにはこれがまったく当てはまらない。2年前、6代目のオリヴィエ・クリュッグが入社して初めてサラリー代わりに受け取ったという、81年ベースのクリュッグ グランド・キュヴェを味わい、澱抜き後も良好に熟成することを確信した。

したがって、普通のノンヴィンテージが“飲み頃を逃さない”ために澱抜きの日付の公開が望まれるのとは対照的に、クリュッグ グランド・キュヴェは“熟成を楽しむ”という目的から澱抜きの日付が重要性をもつというわけだ。

ところで、クリュッグ グランド・キュヴェが初代ヨハン・ヨーゼフ・クリュッグの定めた第1のキュヴェ、すなわち“その年の天候に左右されず、毎年最高の極みを目指して造られたシャンパーニュ”であることは連載第二回で述べたが、これもベースのヴィンテージが異なる2つのクリュッグ グランド・キュヴェを同時に試してみるとよくわかる。

5年ほど前、偉大な年とされる96年ベースのクリュッグ グランド・キュヴェと、2000年代で最も難しかったという01年ベースのクリュッグ グランド・キュヴェを同時に味わう機会に恵まれた。もちろん両者はアッサンブラージュが異なるし、5年間の時間的な開きがある。それを差し引いても、クリュッグ グランド・キュヴェでしか味わえない、無限の奥行きやレイアーといった唯一無二のアイデンティティが2つのボトルに共通して感じられたのだ。

そして今年から、クリュッグ グランド・キュヴェには初代から受け継ぐクリュッグの哲学を表す『エディション ナンバー』がフロントラベルに記載されることになった。これは創業した1843年以降、クリュッグがクリュッグ グランド・キュヴェをゼロからアッサンブラージュした回数を表している。現行の2007年ベースが163回目のアッサンブラージュとなり、ラベルには“163ème Edition”と記される。

163ème Edition
これまでは熟成したクリュッグ グランド・キュヴェを楽しもうと思っても、セラーに複数のボトルがある場合はiDを手掛かりに何年ベースかチェックしなければならなかったが、今後はエディション ナンバーのおかげで一目瞭然。

ただし、同じエディション ナンバーであっても、澱抜きのタイミングが異なることはあり得るので、私のような真のクリュッグ・ラヴァーは結局、iDを確認せずにはいられないのだが……。

話をKRUG iDに戻すとしよう。実は、クリュッグアプリで明らかになるのはアッサンブラージュや澱抜きのデータだけではない。フードペアリングに加え、そのシャンパーニュにふさわしいミュージックも提示され、しかも視聴まで可能だ。聴覚が味覚に大きく影響するというオックスフォード大学の研究に基づき、クリュッグはミュージックペアリングを提供している。

例えば、iD 115017のクリュッグ グランド・キュヴェであれば、ベートーヴェンの交響曲第9番がリコメンドされる。アッサンブラージュされた183種類のワインは、1つ1つがまさにオーケストラにおけるインストルメンツであり、第9の第4楽章なら、それぞれが声楽家と言えるかもしれない。

Photo:Tadayuki Yanagi

メニルのシャルドネはテンションのかかったソプラノであり、ヴィレール・マルムリィのシャルドネはまろみを帯びたアルト。ヴェルズネィのピノ・ノワールがたくましいテノールなら、ブージィのピノ・ノワールはバリトンのように低く響く。

第9と『クリュッグ グランド・キュヴェ』とのミュージックペアリングは、これまでに経験したことのないシナジーを生み出し、飲み手に新たな感動を与えてくれることだろう。

 

【連載記事一覧】

Vol.1 <偉大なシャンパーニュを造るには、偉大なクリュ(畑)が不可欠である>

Vol.2 <KRUGは「アッサンブラージュ」である。「アッサンブラージュ」は直感である!?>

 

他にはない味わいを夢見た初代の考えを貫き、1843年の創業以来6世代にわたり伝統の製法を忠実に守り続けるクリュッグ家。
芸術にも喩えられるアッサンブラージュと6年以上の長く静かな熟成を経て、独特の深く複雑な味わいが生まれます。

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