なぜ笑えないのだろう?新国立劇場のオペラ『セビリアの理髪師』

週刊ファッション日記 番外編

初台の新国立劇場でロッシーニのオペラ『セビリアの理髪師』の最終公演(12月10日)を観た。今シーズン(2016-17年)の新国立劇場は10月の『ワルキューレ』で幕を開け、続いて『ラ・ボエーム』で泣いて、そして『セビリアの理髪師』で笑って、今年を締めくくっていただこうという算段のようだ。

何故だか知らないが、『ラ・ボエーム』では涙腺が緩んだ私も、この『セビリアの理髪師』では5回ほど笑ったぐらい。場内の笑いも少ないように感じた。素晴らしい上演だったと思うが、何故なのだろう?

理由は、上演があまりに“立派”だったためではないのだろうか。アルマヴィ―ヴァ伯爵役のミロノフは最後の場面で普通カットされる超難度アリア『もう逆らうのをやめろ』を歌うなどロッシーニ・テノールとしてファン・ディエゴ・フローレスの次を狙える逸材であることを十分に証明したし、ロジーナ役のベルキナも新国立劇場初登場で見事な歌唱に加えて下着姿を披露するなどサービス精神も旺盛。

アルマヴィ―ヴァ伯爵(ミロノフ)とフィガロ(イェニス)。イェニスのギターの巧さはホンモノ! 撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場
アルマヴィ―ヴァ伯爵(ミロノフ)とフィガロ(イェニス)。イェニスのギターの巧さはホンモノ!
撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

狂言回しのフィガロ役のイェニスは欠点を探すのが難しいほどスタイリッシュ。憎まれ医者バルトロ役のパスクアーレもバッソ・ブッフォとして合格。

昨年のプラティコや往年のエンツォ・ダーラみたいな、いるだけで面白い存在ではなかったものの(肥満度が足りない?)、及第点。

ロジーナ(ベルキナ)、アルマヴィ―ヴァ伯爵(ミロノフ)、医師バルトロ(パスクアーレ) 撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場
ロジーナ(ベルキナ)、アルマヴィ―ヴァ伯爵(ミロノフ)、医師バルトロ(パスクアーレ)
撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

しかし、可笑しくないのである。笑えないのである。立派過ぎるのである。