スーツのクォリティは、お直し屋が一番よく知っている!?

モード逍遥 #22

豊洲市場やマンションの杭打ち問題など建築の基礎工事の施工が話題になっているが、スーツにも建築の基礎にあたる部分がある。

服地や裏地のなかに隠された、芯地や各種補強布などの、下処理にあたるところだ。これらは真面目に仕事をすると手間がかかるのだが、簡略化しようと思えばいくらでも手を抜けことができる箇所でもある。

筆者にスーツ作りの基本を教えてくれた服部晋先生は「自分の仕立てた服が、いつなんどき修理されるか判らない。裏地をはずされたときに、他人に見られても恥ずかしくない仕事をしておけ」と、おっしゃっていた。

テーラーは自分の作ったものを他人に修理されるのを嫌うものだ。ミラノの『カラチェニ』など名の通った仕立て屋は、自分たちで作った服は無償で修理することが多いようだ。

それは靴屋も同様で、ロンドンのジョン・ロブ(ビスポーク)などは、踵のゴム部分をはずれにくくしたり、コバのステッチを通常の倍の細かさでハンドステッチするなど、他人が分解修理しにくいように靴を組み立てている節がうかがえる。

それは、伝統的な製法の秘密が漏れるのを防ぐ理由もあるのだと思うが、“自分たちの作ったものは最後まで自分たちで責任を持つ”、という職人の気概のように感じるのである。

しかし、そうした製法上の秘密やクオリティの善し悪しを、簡単に知ることのできる職業の人達がいる。それがお直し屋さんだ。彼らは、オーダースーツやハイブランドの既製品をいつも分解修理しているから、どこそこのブランドは世間の評価ほどには「たいしたことねぇや」、といった情報を把握している目利き集団といってよいだろう。