岩手への郷土愛がつくった、地方イタリアンの先駆け。 ~岩手県大船渡市 ポルコ・ロッソVol.1

今でこそ、地方のイタリアンレストランは珍しくなくなったが、このような状況になるずっと前に、岩手県大船渡市でオープンしたのが『ポルコ・ロッソ』。この町で生まれ育ったシェフが腕を振るうこのレストランには、イタリアにも負けない郷土愛があった。

山崎純シェフ

 

—今の場所にお店を構えられた理由はなんですか?

僕は大船渡で生まれ育ちました。僕が若い頃、この辺りにはデートで行けるようなお店がなかったんです。だから、女性をエスコートして、食事やお酒を楽しめるようなお店をつくりたかった。それで24歳で家出をして、東京に行きました。その時から最終的な目標は大船渡でレストランをやることでした。

 

—実際にお店を出されるまでの経緯を教えてください。

上京したのは1990年で、まさにバブル真っ盛りでした。で、既に東京で働いていた先輩を頼って行ったんですけど、そのアパートの近くにいいレストランがあって。たまたまそこに食事に行った際に、スタッフを募集してたんですよね。

これは渡りに船だと思って、応募しました。親方が素晴らしくてね。そこで30歳まで働きました。そしたら、サルバトーレが中目黒にできたんですよ。食べに行ったら「このまま日本にいちゃダメだ!」という衝撃を受けましてね。即ローマに行ったんです。それで帰国して、大船渡に帰って店の準備を始めました。今からもう18年も前になりますね。

 

—当時、大船渡でイタリアンレストランをやることはチャレンジでしたか?

地元の人からはね「やめたほうがいいよ。こっちでは10年早い」って言われたんですよ。僕は「だったらやろう!」と思って。だって、10年経ったら普通になるんだったら先にやっておいた方がいいじゃないですか。

何と言っても地元なんで、具体的に店を開く場所を探す際は進めやすかったです。あと、こっちは水の質がすごくいいんです。すべて井戸の水でまかなえて、味がとてもいい。これは料理をつくるうえではすごく助かりますよね。

 

—食材にも恵まれていますか?

そうですね。僕は自分のところの料理を、三陸気仙料理って言ってます。この辺一帯の食材をいかに美味しく召し上がっていただくかに情熱を傾けています。

僕は、食材は“食財”だと思っています。お店で使う食財は、近くの市場や特定の生産者の方から分けていただいたものばかりですよ。

四季折々で美味しい食材は変わって行きますが、代表的なのは岩手県産のお米を食べてそだったありすポークという豚とかですね。今のシーズンは牡蛎がどんどんふくよかになっていって美味しくなります。あと、近くに、アマタケさんという、南部どりを育て販売している会社の本社があって、そこの鶏肉もすごくいい。白レバーのパテなんかはおかげさまで評判がいいですね。

 

<Vol.2へ続く>

 

text:Miki Ozawa

Photo:ポルコ・ロッソ